創造性の心理学③|変革性

こんにちは、やまもとです。

創造性について、Runco教授がまとめた書籍「Creativity」を学習しつつ内容をまとめています。

前回は、創造性の連想理論とは異なる考え方である類推思考について学びました。類推思考とは、新しい概念構造を産み出さずに、解釈やアプローチを変えて、既存の概念構造を別の革新的な見方に移すことでした。

この時、新しく得られた解釈が革新的であれば創造性が発揮されたと考えられます。すなわち、解釈に革新性が備わっているのか否かによって、創造性の有無を判断することができます。このような、解釈やアイデアにあらかじめ装備された革新性を、変革性(Transformational)といい、それをもたらす個人の能力を変形力(transformational capacity)と呼ぶようです。

変革の定義

Feldmanら(1972)は、変革(Transformation)を次のどれかに相当する場合と定義しました。

  • どの程度、得られた回答が、既存の形の改良ではなく新しい形の生成を表しているか
  • どの程度、刺激的な状況の見かけ上の制約が、高度に適切な方法で克服されているか
  • どの程度、その解釈やアイデアが、観察者に新たな考えを生じさせているか

創造性と変革性

Feldmanら(1972)は、さらに、Guilford(1967)の発散的生産の4つの能力(流暢性、柔軟性、独創性、精緻性)を測定するためにGuilford自身が開発したTorrance Test for Creative Thinking (TTCT)の審査員の審美的反応を指標化することで、変革オペレーションを試みました。

Feldmanら(1927)は、中流階級の高校3年性の男女87名に対してTTCTを実施しました。この時、審査員には以下の評価に集中するように指示が出されました。

  • 状況の制約を打ち破っているように見えるもの
  • 回答によって生じた可能性についての思考や考察を刺激するもの
  • 回答によって生じた「新しい現実」に自分の考えを合わせるきっかけとなるもの

結果として、「創造性が高い」と判定された回答の1/8は、「変革的である」と判定されました。また、変革的アイデアを生み出した5名のうち3名は、TTCTでも高得点を獲得していました。

この結果からすると、TTCTによる創造性(発散的生産)は、一部は変革性という意味で創造的と判定されたものの、大部分は変革性とは異なる意味で創造的であると判定されたことになります。すなわち、創造性と変革性は、部分的に説明できるものの、必ずしも一致しませんでした。

まとめ

変革性に関する説明は少なかったため、この記事も短くなりました。

書籍には、Runco教授ら自身の変形力に関する研究の説明もあったのですが、結果が書かれていないためまとめるのをやめました。

分かったことは、次の通りです。

  • 創造性が高いことは、必ずしも変革的ではない

参考

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