発散的思考と創造性

ブレーンストーミングは、創造性を生み出す手法としてよく知られていますが、これは発散的思考と収束的思考の研究に基づいています。

発散的思考は、Guilfordの「Nature of Human Intelligence」(Guilford,1967)で明らかにされたそうです。

しかし、オンライン上でこの書籍は見つからなかったので、後世のKaufmanの論文(Kaufman et al., 2011)からその概要を見てみます。

Guilfordの発散的生産

発散的思考(divergent thinking)は、当初、発散的生産(divergent production)と呼ばれていました。これらは、同じ意味ですが、現在では「発散的思考」が用語として使われています。

Guilfordは、創造性を知性の一つと捉え、知性を下記の3つの次元で表せるとしました。

  • Operation・・・タスクに必要な、精神的な運動
  • Content ・・・一般的なテーマ領域
  • Product ・・・多様なテーマと思考によって生み出される可能性のあるもの

さらに、異なるマインドが必要なOperationが5つ、Contentが4つ、Productが6つあるとし、全部で120個の精神的能力に分けました。(Guilford,1967, Kaufman et al., 2011

このOperationの1つが、発散的生産です

Guilfordは、明確な答えがない質問への回答(「このレンガは何に使えますか?」など)を分析し、発散的生産は次の4つの能力から構成されているとしています。(Guilford,1967, Kaufman et al., 2011

  • Fluency・・・流暢さ。回答の数。
  • Flexibility・・・柔軟さ。回答のカテゴリーまたは概念の数。
  • Originality・・・独創性。他の参加者から出なかった一意な回答の数。
  • Elaboration・・・精緻性。使い方に関する記述から評価。

Guilfordの知性モデルの詳細は不明ですが、発散的生産の4つの能力はブレーンストーミングの参考になるのではないでしょうか。例えば、ブレーンストーミングの収束フェーズで多数派のアイデアを採用してしまうと、Originalityは無視されてしまいがちかと思います。

発散的思考と創造性

RuncoとAcar(2012)によれば、発散的思考はOriginalityに繋がることが多く、Originalityは創造性の中心概念であるため、近年では発散的思考は創造性と関係があると考えられています。

しかし、発散的思考だけでは何も創造しないので、発散的思考は創造性と等しいわけではありません。イコールではないものの、発散的思考は創造的資質の先行指標にはなると考えられています。(Runco&Acar,2012

また、Guildfordの発散的生産の4つ能力のうち、Fluencyは生産性に関する指標であり、発散的思考の測定には(少なくとも単独では)用いない方が良いと考えられています。(Runco&Acar,2012

実際、flexibitiyとoriginalityは発散的思考との相関ありましたが、fluencyは相関がありませんでした。(Runco&Okuda,1987

創造性は単一の特性ではなく、いくつかの能力とスキルの組み合わせと考えられています。例えば、問題識別、問題定義、アイデア生成、アイデア評価、アイデア適用、アイデア変更といったスキルです。(Runco&Okuda,1987

特に、「創造的な解決策とは、創造的な問題の応答に過ぎない」(Getzels,1975)ため、創造的問題を見つけ出す問題発見能力は重要です。(Runco&Okuda,1987

問題発見力と問題解決力はどちらも発散的思考の構成要素ですが、Runcoらの研究によれば、この2つは明確に異なる能力であることが分かっています。(Runco&Okuda,1987

また、パーソナリティ尺度のBig5のうち、開放性(Openness)と発散的思考には相関があることが確認されています。(MoCrae,1987

まとめ?

Guilfordは発散的思考の要素を4つあげましたが、近年では発散的思考はflexibilityとoriginalityで特徴付けられることが分かりました。

創造性に必要な能力・スキルの中でも、問題発見(識別)、問題定義、解決策(アイデア)生成といった能力・スキルに、発散的思考は関連するものの、創造性そのものではないこと、創造的資質の推定指標にはなることが分かりました。

また、問題発見力と問題解決力は明確に異なるので、ブレーンストーミングでは使い分けが必要になりそうです。そうしないと、問題発見フェーズで問題解決力を使っているのに、「発散的思考だからいいでしょ?」と問題に気づかないことになりそうです。

上記でも参照していますが、創造性研究のうち発散的思考に関しては、現在はRunco教授(南オレゴン大)が第一人者のようですね。

コメントを残す