ライフサイクル別のマーケティング戦略

こんにちは。やまもとです。

マーケティングをご存知の方には当然のことかもしれませんが、プロダクト・ライフサイクルのどの期にいるのかによってマーケティング戦略は異なります。おそらく、どのマーケティングの教科書にも書いてあることですが、マーケティング検定のテキストを参考に一覧表にまとめてみました。

プロダクト・ライフサイクル別のマーケティング戦略

この記事では、この一覧表をもとに簡単に解説していきたいと思います。詳しいことは、マーケティングの教科書を読んでみてください。

導入期

価格戦略の記事でも書きましたが、導入期では、開発コストの早期回収を目指す「上澄み吸収価格」戦略と、市場シェアの早期獲得を目指す「市場浸透価格」戦略があります。

上澄み吸収価格戦略

上澄み吸収価格戦略では、少数の富裕層をターゲットにするため、広くプロモーションしたり、満遍なく流通させることは意味がありません。むしろ、限定された顧客にだけ公開されることやお得意様だけに販売していることが、ステータス感による付加価値になる可能性が高いです。そのため、プロモーションは営業などのプッシュ型を使い、流通経路もあえて限定したものにします。

市場浸透価格戦略

逆に、市場浸透価格戦略では、イノベータに認知・購入してもらうため、あるいは価格に敏感なコスパ層に認知・購入してもらうため、広くプロモーションし、入手可能な販売経路を用意しておく必要があります。イノベータは一般的にマニア層なので、基本的製品がいかにマニア心をくすぐるかが重要になってきます。コスパ層では、製品が提供する価値に対して、価格にお得感があることが重要になります。いずれにしろ、広く伝えるためにプロモーションはプル型に、流通経路は開放されたものにします。

成長期

成長期のマーケティング戦略は、ある意味簡単で、市場シェアの獲得を目指すことの一本になります。

この時期は、市場が勝手に拡大していくので、何もしなくても売上拡大していきます。しかし、成熟期では、市場シェアが大きいほど優位なので、シェア獲得のためには市場成長率よりも高い成長率で販売拡大していく必要があります。そのため、流通経路は開放的に広げていき、プロモーションはマスを対象としたプル型になります。

ただし、プル型のプロモーションではあるものの、この時期は、とりあえず買ってみるアーリーアダプター層の中の、自分で良し悪しを判断するビジョナリーな人たちの中の、さらに多くの人に影響を与えるオピニオンリーダーを獲得(実際に使用して意見を言ってもらう)することが、重要になります。かつては、有名人を使ったTV CMがこの役割をになっていましたが、最近ではSNSを中心としたインフルエンサーの方が重要度を増しています。

製品としては、基本的機能だけは競争優位が成立しないので、機能拡張品質向上付加的サービスといった便益の束が必要になってきます。同時に、価格でも競争が行われるため、価格は徐々に低下せざるを得なくなります。

成熟期

成熟期は、競争地位に応じた有名なマイケル・ポーターの3つの戦略(コスト・リーダーシップ差別化差別化集中)と模倣戦略が主に採られます。マーケティング戦略も、それらに合わせた形になります。

リーダー企業

業界を代表するリーダー企業は、市場シェア維持利益最大化のため、マーケティングでブランド確立を狙います。これは、主な消費者がマジョリティ(誰かの評価を見て自分も使おうと考える人たち)なため、ブランド認知を上げて市場から評価されていることを知らしめる必要があるからです。数が膨大なマジョリティ層を相手にするため、全方位(フルカバレッジ)型製品群を用意しなければならず、流通も広く開放型でなければならず、プロモーションはマス向けにプル型で行われます。

チャレンジャー企業

チャレンジャー企業は、リーダー企業の市場シェアを崩すべく、ブランドスイッチを狙います。そのために、リーダー企業の弱みに漬け込み、弱みを克服できる差別化された製品によって一点突破を目論んできます。対象となる消費者は、リーダー企業と同じマジョリティなので、プロモーションではリーダー企業の製品を悪く言い、自社製品を良く言う敵対的広告が行われることがあります。昔の話ですが、コカ・コーラに対するペプシの広告がまさに敵対的でした。

フォロワー企業

フォロワー企業は、リーダーと戦うのではなく、模倣した低価格な製品で、価格に敏感な経済性セグメントに訴えます。広くプロモーションを行っても、低価格販売なので費用対効果が期待できません。そのため、プロモーションはプッシュ型で、流通はドンキホーテのような格安店経由で行われたりします。

ニッチャー企業

ニッチャー企業は、リーダー企業が割りに合わないと判断したある特定のこだわりを持つセグメントに絞って、顧客マインド内のシェアを高めることを狙います。どうしても外せない特定の機能を提供してくれるのは自社製品だけ、という状態を作り出せれば、少しのことでは揺るがない顧客ロイヤルティが出来上がります。製品も入手経路も限定されたものでよく、プロモーションもそのセグメントがよく見る専門サイト専門誌といったところに絞られます。

衰退期

衰退期にとられる戦略は、①イノベーションで新需要を作る、②海外などの未発達市場に既存製品を展開する、③その製品がクリティカルな小市場に絞り縮小する、④M&Aなどにより残存者利益を獲得する、⑤資本に余裕があるうちに撤退する、など様々な戦略があります。

ただし、マーケティング戦略としては、上記に述べてきた方針と同様になります。①と②は、導入期に戻ることになるため、導入期と同様です。③は、ニッチ市場と同等なので、ニッチャーのマーケティングと同様です。④は、経営の問題なので、マーケティングにできることはあまりありません。⑤は、マーケティングとしては、既存利用者にサービス終了の連絡や、移行先の提示をする程度でしょうか。

まとめると次のようになります。

  1. 技術革新|イノベーションで導入期へ戻る
  2. 海外進出|海外の未発達市場へ参入し導入期へ戻る
  3. 縮小特化|その製品がクリティカルな小市場に絞り縮小し、ニッチャー企業になる
  4. 刈り取り|M&Aなどにより残存者利益を獲得する
  5. 撤退|資本が余裕があるうちに撤退する


ということで、プロダクト・ライフサイクルに合わせたマーケティング戦略をざっくり説明してみました。

当然、競合他社もここでまとめた内容を知っていると考えられるので、そのまま実行しても上手くいくとは限りません。

しかし、これらを知っていると、競合他社が何を目論んでいるのか推定することができ、対抗策を考える土台となります。

なので、少なくとも、土台として知っておいた方が良いですね!

コメントを残す