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市場の魅力を測る7つの軸

こんにちは。やまもとです。

マーケティングでは、製品開発プロセスは、基本的にマーケット・インの考え方を採用することになります。マーケット・インとは、市場や顧客ニーズに合わせた製品・サービスを開発することで、コトラーによればマーケティング2.0に相当します。逆に、企業が作りたい製品・サービスを開発して、それを市場や顧客に売っていくスタイルは、プロダクト・アウトと言いマーケティング1.0に相当します。

マーケット・インの製品開発プロセスでは、最初に「市場機会の発見」が必要になるため、市場分析を行います。そのとき、市場がどのくらい魅力的なのかを判断する必要があるので、判断軸(判断の観点)をあらかじめ持っておくと、市場分析が効率的になります。MBAで勉強していたときは、市場の「規模」「収益性」「成長性」「競合度」の4つの軸で判断すると聞いていたのですが、マーケティング検定によると7つあるそうなので、知識の更新のために記録しておきたいと思います。

さて、7つの軸とは、次の7項目のことです。

  1. 市場の成長性
  2. 早期の参入
  3. 規模の経済性
  4. 競争上の魅力
  5. 投資の程度
  6. 収益性
  7. 市場リスク

これらを、一つ一つ見ていきます。

1. 市場の成長性

もし市場が急成長しているならば、製品を市場に投入するだけで売上高は自然に伸びていくため、市場の魅力度はとても高いです。その場合、早く製品を市場に出すことが重要になってきます。逆に、ほとんど成長していないならば、その市場は既存企業によって独占または寡占されている可能性が高く、新規参入する魅力度は低くなります。

市場の成長性を調べる第一の方法は、調査会社のレポートを探すことです。大抵の場合、市場の成長率も書いてあります。第二の方法は、市場を構成する企業の有価証券報告書を調べ、3〜5年分の売上高を会計年度ごとに積み上げ、積算値(市場規模)のCAGR(年間成長率)を計算することです。市場規模とCAGRを見れば、その市場がプロダクト・ライフサイクルのどの段階にあるのかもおおよそ検討がつきます。

プロダクト・ライフサイクルの導入期では、まだ市場が形成されていないため、市場規模が小さく、CAGRが0%に近いです。成長期に入ると、CAGRが10%を超え、時には50%とか100%といった伸びを示すことがあります。成熟期に入ると、市場規模は大きくなっており、CAGRは3~5%程度に落ち着いてきます。衰退期に入ると、市場が縮小を始めるため、CAGRはマイナスになってきます。

このように、既存市場であれば調べることができるのですが、新規市場の場合はそうはいきません。そもそも、データがないためです。そこで、耐久消費財の場合は、フランク・バスが提唱したバス・モデルを使った売上予測が有名です。バス・モデルは、ミクロ経済学の教科書などに詳しい説明があると思いますので、そちらを参考にしてください。

2. 早期の参入

早期参入が重要になるのは、大抵の場合、先行優位性先発優位性)があるからです。先行優位性とは、顧客にその市場の第一人者とみなされ、代替案を評価する時のベンチマークにされたりするといった優位性のことです。先行優位性があると、競争地位がカテゴリーリーダーになりやすく、規模の経済性によるコストメリットを享受しやすくなります。

早期参入度合いを調べるには、競合となる製品・サービスの数と市場占有度合いを調べるのが定石でしょう。競合製品やサービスが少ないほど、早期参入度合いは高いはずです。もちろん、ただ早く参入すればいいというわけではなく、すでに参入している製品・サービスとの差別化を図るため、または競争に勝てるポジションを得るために、ポジショニング価値提案をよく検討する必要があります。

ところで、一般的には先行優位性が語られることが多いですが、後発優位性も存在します。後発優位性とは、先行する製品・サービスからその失敗や問題点を学べるため、より良い製品・サービスを低コストに開発できるという優位性です。

後発優位性は、IT業界に特に多く、おそらくGAFAMは全て後発です。Googleは検索エンジンが乱立していた2000年頃の創業です(AltaVitstaとかありましたね…)。当時の検索エンジンは欲しい情報を探すのに上位100サイト程度を見る必要がありましたが、Googleは欲しい情報が1~5位くらいに表示されて衝撃的でした。Amazon.comも世界初のECサイトではなく、世界初はワインのオンライン販売だったと記憶しています。ただ、ワインだと品質が予想しにくく、Amazonは品質劣化しにく書籍を扱った点が上手かったと思います。FaceBookが創業した2006年当時にもSNSは存在していて、公序良俗の反した使い方が蔓延ってしまい、一旦使い始めたユーザが利用をやめていき、長続きしませんでした。FaceBookは、当初、ハーバード大学やその近隣大学の学生のみに利用者を限定し、実名登録にすることで公序良俗に反した使い方を抑制していました。

逆に、先行優位性が顕著なのは、権利の獲得がビジネス上で重要な位置を占める産業です。例えば、法規制によって参入が規制されてる業界(電波、電力など)や、権利が有限な業界(資源採掘など)、あるいは獲得した権利で守られる業界(製薬など)です。これらは、早期に参入して、早期に権利を獲得できれば、その後の新規参入が難しくなるため、早期参入が有利に働きます。

以上から、業界の特性に応じて、早期参入が魅力的かどうかを判断する必要があります。おそらく、権利を含む資源の有限性があれば先行優位性を、資源の有限性がなければ後発優位性を考えた方がいいかもしれません。

3. 規模の経済性

規模の経済性があると、規模拡大によってコストダウンができるので市場の魅力が高まります。

製造業のように工場で大量生産できる場合は、工場の建設・稼働コストといった固定費の単位コストを削減できます。しかし、エステのようなサービス業は、規模の拡大には大量の店舗とエステティシャンと備品が必要になり、出店を増やすごとに固定費も増えるため、規模の経済性が効きません。

ただし、規模の経済性が効かない業界で、規模の経済性を発揮する方法を見つけると、業界を書き換えることがあります。例えば、航空業界は、規模拡大のために航路を増やそうとすると、航空機や乗組員などが必要になり固定費が増えます。そのため、サービスの大量生産が難しく、規模の経済性が効きにくいと考えられました。ところが、サウスウエスト航空は、航空機を増やさずに便数を増やすことで規模の経済性を発揮する方法を編み出しました。その結果、座席あたりの固定費コストが下がり、圧倒的な低価格で航空券を販売することができました。これが、サウスウエスト航空が発明したLCC(ロー・コスト・キャリア)というビジネスモデルの本質です。

このように、一見規模の経済性がないように見えても、規模の経済性を見出せれば魅力的な市場となります。そのため、規模の経済性が効かない=その市場には魅力はない、と即断するのは早計かもしれません。

4. 競争上の魅力

こちらのnoteの記事でも書きましたが、既存市場であれば市場シェア参入障壁の程度で、おおよそ競争上の魅力は判断できます。潜在的な新規市場であれば、これらを予測することになります。

潜在的な市場は、プロダクト・ライフサイクルにおける導入期に当たります。導入期は、まだ利益が出にくく、多くの企業は様子見をするため、競合他社が少ない傾向にあります。また、市場成長前なため、シェアの取り合いにならず、他社に反撃することも少ないです。このような場合は、成長期で大きな市場シェアを獲得できる可能性があるため、市場の魅力度は高くなります。

既存市場の場合、一般に、成熟期の市場シェアが独占市場に近づけば近づくほど、競争度合いは低くなり、参入障壁は高くなります。というよりも、参入障壁が高いため独占市場になっていると考えた方が正しいでしょう。そのため、成熟期を迎えた市場は、あまり魅力的ではありません。

5. 投資の程度

一般的に、新しい製品・サービスを開発するには先行投資が必要になります。投資の程度とは、どのくらいの投資が必要かということです。先行投資としては、技術投資や原材料コスト、マーケティングコスト、経営資源(ヒト・モノ)への投資が含まれます。

ただ、これらの多くは一般開示されない情報なので、競合他社の決算情報から投資の程度を予測することは困難です。自社で行ってきた投資と開発の経験から、予測するのが一般的ではないでしょうか。

6. 収益性

収益性は、利益やROIで測定します。

既存市場であれば、市場を構成する主な企業の有価証券報告書を調べ、売上総利益率や営業利益率の平均値を算出するなどして、どの程度の利益率が見込めるのかを調べることができます。

潜在的な新規市場の場合には、このような方法は使えないので、類似市場の平均利益率を参照するなどの方法では予測できるかもしれません。

7. 市場リスク

既存市場がない新製品は、市場の情報が少ないほどリスクが高まります。そのため、参入に慎重になります。

市場リスクとしては、市場安定性損失危険性報復可能性特許の強さ技術の変化政府の規制などがあります。


なんだか、後半は尻つぼみになってしまいました。でも、マーケティング検定の公式問題集でもあまり詳しくは書かれていません。

前文で述べた「規模」「成長性」「収益性」「競合度」は、上記の7つの軸に含まれていましたね。

なので、「早期性」「投資」「リスク」の3つを加えれば良いのではないでしょうか。

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