プロダクト・ライフサイクルの10パターン

こんにちは。やまもとです。

製品の求められる状況を「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」に分けて考えるプロダクト・ライフサイクル(製品ライフサイクル、PLC)は有名です。しかし、全ての商品が基本的なプロダクト・ライフサイクル通りの推移を辿るわけではありません。マーケティング検定の勉強をしていたら、通常とは違う、特徴的なライフサイクルが3つ(スタイル型、ファッション型、ファッド型)挙げられていました。さらに調べてみると、Rink&Swan(1979)では10個のパターンとして整理されていました。最近だと、20個くらいのパターンがあるようです。そこで、変化がないパターンや単調増加するパターンを除くプロダクト・ライフサイクル・パターンを、忘れないように記録しておきたいと思います。

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1. 基本型

基本型は、いわゆる「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4ステージに分けられる基本的なプロダクト・ライフサイクルです。古典型(classic type)とか、伝統型(traditional type)と呼ばれたりもしています。導入期の前に、「開発期」が入れられることもあります。

基本型は、なかなか売れなかった商品が、消費者が商品を認知して市場に浸透し、需要が飽和するため伸び悩み、消費者が別の商品にスイッチして衰退していく、という商品の基本的な一生(プロダクト・ライフサイクル)を表しています。

説明不要かもしれませんが、「導入期」はイノベーターと呼ばれるマニア層が飛びつく時期、「成長期」はアーリーアダプターと呼ばれるビジョナリーやオピニオンリーダーが購入する時期、「成熟期」はマジョリティと呼ばれる大衆層が購入する時期、「衰退期」はラガードと呼ばれる無関心層がようやく購入を始める時期にだいたい相当しています。

2. 流行型

流行型は、成熟期がほとんどなく、ある程度の期間で衰退していくプロダクト・ライフサイクルです。マーケティング検定では、「ファッション型」と呼ばれています。

流行型の特徴としては、成熟期がほとんどないことです。消費者が徐々に広がっていき、広がりきった時期に衰退期に移行してしまいます。広がりきるまでの期間は数年単位のものもあり、瞬間的に購入が増えるものではありません。

流行型の主要な消費者であるアーリーアダプター層は、他人と違うことや自分だけの独創性などに価値を感じやすいため、多くの人が真似をし始めると価値を感じなくなってしまいます。単純に言うと、「ダサい」と感じて離れていきます。

例えば、1960年代のヒッピームーブメントや、1980年代末バブル期のジュリアナファッション、1990年代のコギャルファッションなどが挙げられます。しかし、後世になって振り返ると、「なぜこれが流行ったのだろう?」というものが多い気がしますね。

3. 定着型

定着型は、製品が社会に定着し、成長もしない代わりに衰退もしない安定して長期的に続くプロダクト・ライフサイクルです。「ブーム型」(boom)や「クラシック型」(classic)と呼ばれたりもしています。

定着型の特徴は、もちろん衰退期がほとんど訪れないことことです。もし、衰退期が訪れるとすれば、それは業界内で代替品が販売され、ブランドスイッチが起きた時でしょう。

例えば、社会の土台となっている石油や鉄、小麦といったコモディティ製品は、価格変動はあるものの、需要は長期的に安定しています。他にも、現在社会に欠かせない電力や水道のライフライン、文化に統合されているフォーマルな洋服、定番の生活必需品など、業界内で定番となっている製品は、長期安定して売上を維持できます。

4. 季節型

季節型は、流行り廃りを繰り返しながら、何世代にも渡って長期的に続くライフサイクルです。マーケティング検定では「スタイル型」と呼ばれています。また、別の資料では、このタイプを「ファッション型」と呼ぶものもあります。

季節型の特徴は、流行り廃りを常に繰り返していることです。つまり、成長期と衰退期が交互にやってきます。

例えば、カジュアルな普段着といった衣服や、洋風和風といった住宅、印象派やシュールレアリズムといった芸術などが相当します。言い換えると、様式美として確立されたものがスタイル型をとると考えればいいかもしれません。様式美となると、xx様式、yy派と文化の中に位置付けられたり、マナーとして意味づけされ文化の中に取り込まれたりします。こうして、文化の一部となると、多少の流行はあっても簡単には衰退しなくなりますね。

5. 熱狂型

熱狂型は、消費者の熱狂やブランドの人気によって、一時的に異常なほど売れるプロダクト・ライフサイクルです。マーケティング検定では、「ファッド型」と呼ばれています。例えば、1996年におきた「たまごっち」ブームは、これに相当します。

このような熱狂は自然発生する場合もありますが、企業が意図的に行っている場合もあります。後者の場合、計画的陳腐化と呼びます。

計画的陳腐化とは、製品のバージョンアップをすることで旧バージョンを陳腐化させ、旧バージョンの販売量を意図的に減らしていくことです。製品のドミナント・デザインが確定し、どの企業の製品も大体同じものになってくると(=コモディティ化が進むと)、消費者には新しい商品を購入する理由がなくなります。そこで、企業側は計画的陳腐化を行い、買い替え需要を生み出そうとするわけです。

例えば、ソフトウェアは2020年バージョンを販売することで、2019年版を陳腐化させていたりします。また、いわゆる「型落ち」と呼ばれることがある製品もファッド型に相当します。

6. 熱狂定着型

熱狂定着型(extended fad type)は、熱狂型と同様、瞬間的に流行する製品のライフサイクルですが、完全には衰退せずに一部の顧客層が購入し続けるライフサイクルです。

私見ですが、現在のテクノジー業界は、これに相当するように思います。例えば、ガートナー社が毎年発表しているハイプ曲線は、熱狂定着型の曲線によく似ていると思いませんか?熱狂定着型の衰退期というのは、ハイプ曲線でいうところの幻滅期に相当するのではないでしょうか。

実際、人工知能(AI)は、2013年頃から社会に認知され始め、急速に広まりましたが、次第にできることとできないことが認識され、今は定着期に入ったような印象です。しかし、熱狂定着型の盛り上がり非常に短期間(せいぜい1年くらい)なのに対し、AIはもう少し長い期間熱狂が続いた記憶なので、熱狂定着型には当たらない可能性もあります。

7. 破綻型

破綻型は、成長期を迎えずに、そのまま終わってしまうライフサイクルです。これは、多くのスタートアップ企業で見られるライフサイクルです。

新製品が失敗する4つ理由でも書いた通り、多くのスタートアップ企業が失敗する主な理由は「そもそも市場ニーズがなかった」です。市場ニーズがない場合、新製品を販売しても購入者がいないため、成長期に入らず、導入期のまま撤退を余儀なくされます。そのため、失敗した製品は、破綻型のライフサイクルになります。

8. 懐古型

懐古型(nostalgia type)は、すでに下火になっている製品をかつて使用していた顧客層が、長い年月を経たのち、懐かしさから再度購入されるライフサイクルです。リバイバル型とも言います。

例えば、80年代の歌謡曲が再度売れ始めたり、シニア層が昔買えなかったスポーツカーを購入したり、ガンダムやエヴァンゲリオンを大人が見に行ったりすることが挙げられると思います。最近の70~80年代のシティポップが若年層で流行ったのは、明らかに昔シティポップを聴いていた世代ではないので、懐古型というよりもリバイバル型と言った方が適切かもしれません。

9. イノベーション型

イノベーション型は、製品の品質や機能を上げたバージョンを繰り返し販売することで、バージョンアップの度に市場が拡大していくライフサイクルです。

多くの電気製品やパソコン、携帯電話、スマートフォンおよびソフトウェア製品もイノベーション型に相当すると思います。ただし、ここで言うイノベーションは、クリステンセン教授の「イノベーションのジレンマ」でいうところの「持続的イノベーション」のことです。そのため、イノベーション型のライフサイクルを辿っていても、いつかは顧客が要求する性能を超えてしまい、いくらバージョンアップしても販売量が伸びない時期に到達してしまうことでしょう。

10. リサイクル型

リサイクル型は、陳腐化して忘れられていたような製品が、別の用途が判明することで、再び息を吹き返すライフサイクルです。懐古型と似ていますが、新しい用途によって市場が拡大していく点が異なります。

例として真っ先に思いつくのは、ウェブ系プログラミング言語のJavaScriptですね。2000年にはすでに存在していたJavaScriptは、2006年頃にはすでに使い古された流行遅れのプログラミング言語という認識が広まっていました。ところが、GoogleがGoogleMapと非同期通信の仕組みであるAjaxを発表したことによって、その有用性が再認識され、完全に息を吹き返しました。その後、prototype.jsとNode.jsといったライブラリを経て、今ではウェブプログラミングで使用するのが当たり前になっています。


ということで、10パターンのプロダクト・ライフサイクルを紹介しました。

自分的には、どれも「言われてみれば、確かにそういう製品もあるよな」と思うものばかりでした。

他にもパターンがあるようなので、ぜひ探してみてください。

製品のプロダクト・ライフサイクルが分かっていると、どのような戦略をとれば良いのか推測できるようになりますね。

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