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マーケティングにおける製品とは

こんにちは、やまもとです。

マーケティングをご存知の方には当たり前ですが、マーケティング・ミックス4Pにおけるプロダクト(Product)は、単にモノやサービスそのものを指す言葉ではありません。ここで言うプロダクト、すなわち製品は、顧客価値の集合体として捉える必要があります。

そこで、今回は、製品と価値について書いてみたいと思います。用語は、マーケティング検定で出てくる言葉をなるべく使用します。

3つの製品レベル

製品には、大きく分けて①中核部分中核ベネフィット)、②実態部分、③付随部分の3つのレベルがあります。

中核部分とは、「ドリルを購入する顧客は、『穴』というベネフィットを購入している」という有名な例のように、消費者が本当に求めているものです。この中核部分が欠如していると、新製品は大抵失敗します。とはいえ、新製品開発では中核部分を見つけ出すのがとても難しいため、さまざまな理論や手法が存在しています。例えば、クリステンセンは、これをJOB理論としてまとめ上げ、中核部分は「片付けるべき仕事」(Job to be done)を見つけることだと喝破しています。

実態部分とは、デザインやブランド名、パッケージ、特徴、品質水準などの価値提供部分のことです。例えば、デジタルカメラの中核部分は「撮りたい時に撮りたいものを撮る」ですが、デジタルカメラという「モノ」がなければその価値を消費者に提供することができません。特に、品質水準が低く、長期間の使用に耐えられなければ、消費者も購入を躊躇うことでしょう。

付随部分とは、長期保証や使い方の無料講習、カスタマーサポートなどの付加的サービス部分のことです。長期保証があれば消費者も故障時のコストを心配せずに購入できますし、初心者であれば困った時に頼れるカスタマーサポートが充実しているところを選びたいでしょう。

便益の束

差別化の2つの切り口

製品開発において、独自の価値を創り出すためには何かしらの差別化が不可欠です。ただし、差別化にも①製品の差別化と②製品開発能力の差別化の2つがあります。

一般的に、「製品の差別化」よりも「製品開発能力の差別化」の方が模倣されにくく持続性も高いとされています。なぜなら、製品開発能力とは、簡単に言ってしまえば組織力のことで、競合企業からは見えにくい部分だからです。ところで、経営学者のバーニーらが提唱する、組織の強みを分析するフレームワークVRIOでも、模倣困難性(Immutability)が持続的競争優位に必要とされています。つまり、まさにこの「製品開発能力の差別化」こそが持続的競争優位に源泉になります。

製品の差別化と製品開発能力の差別化

機能的価値と感性的価値

顧客が製品から感じる価値は、大きく分けて機能的価値感性的価値の2種類があります。その違いを表にすると次のようになります。

機能的価値感性的価値
内容製品の機能的属性(=はたらき)から得られる価値製品(あるいはブランド)の五感に関わる属性・イメージ等から得られる価値
基盤功利的動機(機能・性能・効果を得ること)快楽的動機(欲求や感情を満たすこと)
価値表出的動機(自信を外部へ表現すること)
特徴・客観的な基準での優劣判断が可能
・価値次元の可視性(特定可能性、測定可能性、普遍性、安定性)が高い
・客観的な基準での優劣判断が困難
・価値次元の可視性(特定可能性、測定可能性、普遍性、安定性)が低い

製造業では主に機能的価値を提供することに目が行きがちですが、アパレル業界だと感性的価値に注目することが多いと思います。しかし、例えば自動車の場合、排気量や走行性能、燃費といった機能的価値に加えて、カラーリングや乗り心地、高級感といった感性的価値も消費者は重視することがあります。ビジネス向けのIT業界では、昔は機能的価値だけを重視した業務を正確に行えるシステムであれば良かったのに対して、現在ではUI(ユーザインターフェース)やUX(ユーザエクスペリエンス)といった感性的価値も差別化のために必要になっています。

価値次元の可視性

ここで、「価値次元の可視性」とは、経営学社の楠木教授が提唱した機能的価値の構成概念で、①特定可能性、②測定可能性、③普遍性、④安定性の4つの尺度から構成されています。機能的価値が明確なパソコンと感性的価値が中心のファッションとを比べると次の表になります。

パソコンファッション
特定可能性処理速度や記憶容量などの製品特性で客観的に把握できる美しさや格好良さなどは主観的であり客観的に把握しづらい
測定可能性動作周波数やバイト数などの客観的な単位で把握できる美しさや格好良さなどは客観的な指標が存在しない
普遍性処理速度・記憶容量・バッテリー持続時間などは、多くの消費者に共通した価値である美しさ・格好良さ・可愛らしさなどは、見る人によって変わるため、消費者に共通の価値が少ない
安定性いつの時代でも価値の大きさは変化しない時代によって、美しさといった価値は変化してしまう

機能的価値が高いと顧客が製品を把握しやすく購買に有効に見えますが、競合他社にとっても把握しやすいため追随や模倣を受けやすく競争優位が低下して行きます。価格次元の可視性が徐々に高まり、価格まで統一された状態がコモディティ化の本質です。つまり、製品開発では、いかにして可視性の低い価値次元で差別化するかこそが重要になります。

価値次元の階層性

いくらデザインが良くても動かない自動車には価値がないように、価値には階層構造が存在しています。

先ほどは2種類に分類しましたが、ここでは価値を下層から4つに分類してみます。

  1. 基本価値:その製品として存在するための基本的な品質や機能(機能的価値)
  2. 便宜価値:その製品の使用や消費にあたっての便宜性(利便性)
  3. 感覚価値:製品を消費するとの感覚的な楽しさや形態的な魅力(快楽的価値)
  4. 観念価値:製品コンセプトやブランドの歴史・物語性が生み出す価値(意味的価値、象徴的価値)

自動車の例で言えば、「移動」が基本価値、「燃費や運転しやすさ」が便宜価値、「デザインや乗り心地」が感覚価値、「BMWやレクサスといったブランド・ステータス」は観念価値となります。

基本価値と便宜価値が「効用」を生み出し、信頼を築く製品力の部分であるのに対し、感覚価値と観念価値は「感動」を生み出し、絆を築くブランド力の部分と考えられます。

企業としては、最低でも基本価値と便宜価値は提供できなければなりません。しかしこれらは、価値次元の可視性が高い故に競合他社に模倣され、やがて差別化要因ではなくなってきます。そのため、競争優位性を持続させるには、感覚価値や観念価値を実現する必要があります。

でも、感覚価値や観念価値を生み出すのは、日本のモノづくり文化は苦手としていますね。だから、日本政府では「コトづくり」という言葉で、感覚価値や観念価値の創出を促進しようとしているのでしょう。

価値次元の階層性

以上をまとめると、

  • 製品とは顧客価値の集合体で、その顧客価値には種類(機能的価値や感覚的価値)と階層性がある。
  • 製品独自の価値を作り出し、コモディティ化を防ぎ、持続的競争優位を獲得するには、模倣困難性による差別化が必要。
  • 模倣困難性を作り出すには、協合他社から見えにくい可視性が低い価値次元組織力で差別化する。

となります。

可視性が低い価値次元とは主に感覚的価値のことになりますが、これを見つけ出すため、現代では「経験価値マーケティング」が重要になってきています。

経験価値マーケティングの話は、次回に書こうと思います。

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