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ブランドとは?

こんにちは。やまもとです。

ブランド」と言われれば、商品名や企業名を思い浮かべますが、抽象概念としての「ブランド」が何を指しているのか分かりにくくないでしょうか?

ブランド研究の歴史を概観する論文(青木2011)によれば、「ブランド」という概念自体が変遷してきたことが書かれています。それによると、1980年代半ばまでは「ブランド」といえばブランド・イメージブランド・ロイヤルティのことで、これは私たちが商品名や企業名を思い浮かべる時に想定している「ブランド」の概念に近いものです。しかし、1980年代にはブランド・エクイティという考え方が登場し、「ブランド」は長期的な投資を必要とする経営資源という認識が広まりました。こうなると、私たち消費者がイメージする「ブランド」とは様相が異なってきます。さらに、1990年代にはブランド・アイデンティティという考え方が登場し、顧客にどのように認知されているかという視点から、企業が顧客にどのように認知されたいのかという視点に変わりました。今日、ビジネスシーンでよく聞かれる「価値提案」(バリュー・プロポジション、VP)とは、このブランド・アイデンティティを価値ベースで表現したものです。ビジネス・モデル・キャンバス(BMC)でも、「価値提案」は真っ先に考えるべき要素になっていますね。

時代区分主たるブランド概念ブランド認識
~1985年
(手段としてのブランド)
ブランド・ロイヤルティ
ブランド・イメージ
断片的認識
マーケティングの手段
1985~1995年
(結果としてのブランド)
ブランド・エクイティ統合的認識
マーケティングの結果
1995年~
(起点としてのブランド)
ブランド・アイデンティティ統合的認識
マーケティングの起点
ブランド概念の変遷(青木2011)

このように、単なる「マーケティングの手段」から「マーケティングの起点」へと概念が変遷してきた「ブランド」ですが、現在どのように定義されているのかをマーケティング検定のテキスト(2020)で確認してみたいと思います。

ブランドの定義

上記のテキストでは、ブランドの定義はアメリカ・マーケティング協会の定義が引用されていました。

ある売り手の商品やサービスを識別させ、競合他社の商品やサービスから差別化するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはそれらを組み合わせたものです。

ISOブランド標準は、ブランドが「利害関係者の心の中で独特のイメージと関連性を生み出し、それによって経済的利益/価値を生み出す」ことを目的とした「無形資産」であると付け加えています。

アメリカ・マーケティング協会

前半は「手段としてのブランド」の定義で、アメリカ・マーケティング協会が創立された1958年当時に定義づけられたものでしょう。後半は、「無形資産」という言葉からしても、ブランド・エクイティの概念が浸透してからの定義と考えられます。

このように、現在の「ブランド」は、マーケティングの手段の1つというよりも、企業の資産であるという認識が一般的になってきています。

ブランドの役割

購買行動分析としての役割

小売店に行って、様々な商品を見てみれば分かるように、製品名にブランドが付与されています。これを「製品ブランド」と呼びます。製品ブランドの場合、製品とブランドが一体化しているため、まるで同じもののように感じてしまいます。しかし、Gardner and Levy (1955) は、製品とブランドの役割を明確に区別しました。

Gardner と Levy の論文は、消費者の製品に対する購買動機の中に 象徴的で意味的な要素を見出し、「実体的・機能的存在としての製品」と 「象徴的・情緒的な記号としてのブランド」とを区分することの重要性を説 いた。更には、広告によってブランドのパーソナリティづくりを行うこと、 また、それが長期的な投資であることを力説している。

青木(2011)

例えば、ルイ・ヴィトンのカバンを考えてみると、「実体的・機能的存在としての製品」とは「ルイ・ヴィトンだろうがカバンはカバンに過ぎない(=カバンとして価値しかない)」ということです。カバンとしての価値とは、「物を詰め込み、持ち運びできる」ということです。しかし、実際にはルイ・ヴィトンのカバンだから購入する人(=ファン)がいて、その人たちにとっては「ルイ・ヴィトンのカバンを所有すること」や「ルイ・ヴィトンのカバンを持つ自分を見せたい」といった点が重要です。このとき、カバンとしての価値は二の次になっています。この機能を超えた付加価値を与えるのが、「象徴的・情緒的な記号としてのブランド」の役割になります。

つまり、ブランドの役割とは、消費者に象徴的・情緒的な「意味づけ」を行い、消費者とブランドの長期間にわたる持続的な関係(=絆)を作ることです。

経営戦略としての役割

上記の消費者とブランドの長期間にわたる持続的な関係は、経営戦略論の言葉でいうと「持続的競争優位性」になります。そして、持続的競争優位性の獲得は、経営戦略論の目的そのものです。

経営戦略論では、持続的競争優位性を獲得するために、2つの有名なアプローチがあります。1つは、マイケル・ポーター教授を中心とし、競争優位の源泉を戦略的ポジショニングに求める伝統的なポジショニング・アプローチです。もう1つは、ジェイ・バーニー教授を中心とし、持続的な競争優位性の源泉を模倣困難な内部資源に求めるリソース・ベースド・ビュー(RBV)のアプローチです。ブランドは、これら2つのアプローチを結びつける役割を担っています。

前者について、ブランド・アイデンティティ「顧客にどういうブランドとして認知されたいか」は、言い換えると「市場の中でどういうポジションを取るのか」というポジショニング・アプローチそのものに相当しています。後者については、ブランドの「意味づけ」によって生まれた強固な関係性は、競合他社が容易に模倣できない経営資源なので、RBVにおける持続的競争優位の源泉になります。

これによって、ブランド構築は、経営戦略において持続的競争優位性を構築するための手段の一つと考えられています。

ブランドの効果

ブランドが、単なる製品名ではなく、顧客との強固な関係性を築くロイヤルティ効果があることは、Cunningham (1956) のパネル調査によって明らかにされました。

Cunningham の論文は、Chicago Tribune 紙のパネル調査データを用いた分 析により、消費者は多くの製品カテゴリーにおいて高いロイヤルティを示す ことを確認し、ブランド・ロイヤルティが企業にとって重要な資産であるこ とを指摘している。

青木(2011)

ブランド・ロイヤルティが高い消費者は、何度も同じブランドの商品を購入します。また、彼らは、競合他社の製品よりも感覚価値や観念価値を感じているため、多少高額であったとしても同じブランドを買い続けることになります。これは、そのブランドに付加価値が上乗せされる効果(価格プレミアム効果)があると見ることができます。

これを事業の側面からみると、ロイヤルティ効果と価格プレミアム効果が発揮されることによって、事業の収益性や成長性が高まっていくと見ることができます。

また、企業にとっての顧客以外への優れたブランドの効果として、次のようなことが考えられます。

  • 流通業者に対する交渉力を高めることができる
  • プロモーション活動がしやすくなる
  • 人材採用がしやすくなる
  • 資材調達を優位に進めることができる

このような効果が複合され、結果として、優れたブランドは「持続的競争優位性」を企業にもたらします。

low angle view of building
Photo by Eva Klanduchova on Pexels.com

今回は、ブランドの定義と役割・効果を見てきました。

たしかコトラーが始めたマーケティング研究は1980年代から始まっていた気がするので、ブランド研究はそれよりも古いみたいですね。というよりも、ブランド研究の延長線上にマーケティング研究があると考えた方がいいのかもしれません。

表題である「ブランドとは?」への回答としては、「ブランドは経営資産であり、優れたブランドは持続的競争優位性をもたらす」としたいと思います。

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