こんにちは。やまもとです。
私は、企業の中で、既存事業を進める部門ではなく、新製品を生み出す部門にいます。しかし、事業として独り立ちできるような製品はなかなか生み出せません。既存製品のアップデートであれば既存顧客もいてまだいいのですが、全く新しい製品となるとそもそも市場があるのかが判然としません。一方で、マーケティング検定の勉強をしてみると、新製品が失敗する典型的パターンが書いてありました。そこで、失敗をなるべく避けるために、4つの典型的パターンを記録しておこうと思います。
1. 対象市場が小さい
CBInsightsの調査では、「スタートアップが失敗する理由」の堂々の1位は、「そもそも市場ニーズがなかった」でした。同様に、「対象市場が小さい」も市場に需要がないことが原因です。
リーンスタートアップやデザイン思考、リーンキャンバスといった新事業の思考法では、一人の顧客を掘り下げて、真のニーズやペインを発見することを推奨しています。しかし、本当にその一人にしか需要がない場合や、小さなコミュニティにしか需要がない場合、対象市場が小さすぎて事業になりません。規模が大きい市場を対象にするには、ニーズやペインの普遍性が重要になります。
潜在的な新規市場の場合、対策としては、ある程度進んだところでデータをとり、需要の規模を推定するしかないでしょうね。なぜなら、新製品が新機軸であればあるほど、参考にできる既存市場や類似市場が存在しないためです。市場が存在しないため、市場規模を推定するような市場調査も行われておらず、調査会社のレポートなども期待できません。
2. 真のベネフィットが欠如している
製造業にありがちかもしれませんが、企業が新製品に対して「何を作るか」に焦点を当てている場合があります。このような場合、新製品担当者も「何を作ると言えば、経営層が納得するのか」に思考が偏り、「なぜ作るのか」が疎かになってしまいます。すると、「真のベネフィットが欠如」したまま新製品開発を始めてしまいます。
あるいは、「顧客が欲しいと言ったから」という理由で新製品を開発したけれどあまり付加価値はなかった、ということもあると思います。「顧客が欲しいと言った」は、経営層を納得させる強力な理由になりますが、顧客にとっては「あったらいいな」程度の付随的なベネフィットであったことが原因と考えられます。
対策としては、真のベネフィットを明らかにすることはもちろん、設計段階でコンセプト・テストをすることが重要になると思います。しかし、最近のAI関連業界では、「PoC(Proof of Concept)を行ってもその先に進まない」という問題が起きています。これは、AIを使って「何を作るか」に焦点が当たってしまい、付随的なベネフィットをテストしているためと考えられます。やはり、まずは真のベネフィットを明らかにすることが重要なのかもしれません。
3. 予測に誤りがある
大企業であれば、大抵の場合、新製品の開発を始めるために、企画を経営層に承認してもらう必要があります。また、承認をもらうためには、利益が出ること(すなわち、売上とコスト)を予測して示す必要があります。しかし、新製品がない段階で(市場もなければさらに)売上を予測することは不可能に近いです。そこで、市場規模を推定して、獲得する市場シェアを決める、価格と販売数を決めるなどをして売上を予想するしかないのですが、推定に推定を重ねているので、正確性はほとんどありません。さらに、「利益が出る」という結果に合わせて予測するので、多くの場合、売上予測は過大になります。
対策としては、リーンスタートアップやビジネスモデルキャンバスが教えてくれているように、顧客価値を小さく確認しながら進める方法があります。製品のコンセプト段階でコンセプト・テストを行い、プロトタイピング段階でプロトタイプ・テストを行い、製品がある程度できた段階でテスト・マーケティングを行う、といった段階的にテストを行うことで、顧客に受け入れられる予測精度を上げていくことができます。ですが、こういったプロセスが整っている大企業は少ない気もします。
4. 投資収益率が不十分である
予測の誤りが売上の精度不足が原因だったのに対して、投資収益率の不十分さはコストの精度不足が原因です。
モノであれば、材料費や工場の稼働にかかる生産コストは、価格変動分を除けば比較的予測しやすいかもしれません。材料は価格がわかっていますし、工場のコストもこれまでの実績を参照にすればよいからです。サービスでも、マニュアルなどでサービスが定型化できていれば、生産コストは比較的予測しやすいでしょう。同様に、人件費はサービス提供者の人数で予測できますし、必要な道具も決まっているので予測しやすいです。
生産コストは比較的予測しやすいのに対して、投資である開発コストは予測しにくいかもしれません。開発は、成功するかどうかもわかりませんし、どのくらい期間がかかるかも不透明だからです。成功するまで開発を続けたとすると、それだけ開発コストは積み上がっていきます。この開発コスト分を売上から回収しようとすると、開発コストが高い分だけ投資収益率は低下します。
そのため、投資収益率を十分に確保するために、開発コストを低く抑えようというマインドが働くことになります。しかし、投資を抑制して開発された新製品は、顧客から見ると価値が低いものになる可能性が高いです。その結果、コストは抑えられたが、売上も対して上がらないという、鳴かず飛ばずな新製品になってしまいます。
対策としては、慎重に市場を選択して、経営資源を集中投下することが必要になると思います。でも、これは、経営者の意思決定の問題かもしれません。
というわけで、新製品が失敗する理由を説明してみました。
これらは、新製品開発における地雷です!
予め地雷を知っておき、少しでも失敗の確率を下げましょう!