こんにちは。やまもとです。
ここのところ、マーケティング検定のテキストを見ながら、マーケティングの各分野をざっくり学ぶ記事を書いています。どんなテーマがあるのかを、本当にざっくりと記載しているだけなので、全体像を俯瞰したいときや学習内容を思い出すきっかけにはなるかもしれません。詳しい内容知りたいときは、ここに出てきたキーワードで検索してみてください。
さて、ここまでのマーケティングは暗黙のうちに1カ国内を想定していました。グローバル・マーケティングは、マーケティングの各種要素を、複数国の場合に拡張する試みです。
グローバル・マーケティング
グローバル・マーケティングの定義
- 複数国における複数市場で同時にマーケティングを展開すること
- 先進国市場の成長限界が意識され、新興国市場へ注目が集まったことがある
- BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)
- BOP(Base of the Pyramid)市場
- 先進国市場の成長限界が意識され、新興国市場へ注目が集まったことがある
グローバル・マーケティングの戦略
グローバル・マーケティングの考え方
- グローバル経営は、「配置(configuration)」と「調整(coordination)」の2次元で考える(ポーター,1986)
- 配置(configuration)
- 「世界のどの国に進出するか」
- 販売:進出国をどこにするか
- 生産:工場の立地場所をどこにするか
- 「世界のどの国に進出するか」
- 調整(coordination)
- 「進出先の各国でどのように活動するか」
- 販売:ブランド・チャネル・価格をどう設定するか
- 生産:生産タスク割当や技術移転をどう行うか
- 「進出先の各国でどのように活動するか」
- 配置(configuration)
グローバル・マーケティングの検討項目
- 配置の検討項目
- 参入市場(国、製品市場)の選定
- 参入モード(輸出、ノフハウ提供、直接投資など)の選定
- 調整の検討項目
- 標準化/現地化の選択
- 知識移転の選択
参入市場の選定
参入市場の特定
セグメンテーションの追加軸
- 地理的変数・人口統計的変数・心理的変数・行動上の変数に加えて、下記も考える必要がある
- エスニック・セグメンテーション
- 購買力平価(Purchasing Power Parity : PPP)
エスニック・セグメンテーション
- 民族的要因(民族、宗教、言語、文化など)を軸とした市場細分化のこと
購買力平価(PPP)
- 各国の家計における必需品を一揃え買うのにいくら掛かるかをUSドルで換算した指数
- 各国でどのくらい購買力があるかを示す
- すでにグローバル展開している商品価格を比較基準とすることもできる
- ビックマック指数
- スターバックス・ラテ指数など
セグメントのタイプ
- セグメンテーションの結果、各国における共通性に応じて、セグメントのタイプが分かれる
- 世界共通セグメント
- 地域セグメント
- 特殊セグメント
世界共通セグメント
- 世界共通で同じニーズを持つセグメント
- 未進出国の市場には潜在顧客がいることが分かる
- 標準品でも受け入れられる可能性が高い
地域セグメント
- ある地理的範囲で共通性を持つセグメント
- 未進出国の市場には潜在顧客がいることが分かる
- 標準品でも受け入れられる可能性がある
- 共通性の例:ヒスパニック系の味の好み
特殊セグメント
- 民族的要因や所得水準を理由として、共通性が見られないセグメント
- ニーズが大きく異なるため、現地に合わせたマーケティングが必要になる
参入国の検討
グローバル・ポートフォリオ
- プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントをグローバル事業に応用したフレームワーク
- 構成要素
- 市場の魅力度
- 競争上の優位性(自社の競争の強さ)
- 市場間の相互連結度 ※ここが違う
- マクロ経済的連結度
- 製品−市場の連結度
- 企業特殊な連結度
マクロ経済的連結度
- マクロ経済レベルで2カ国の交流が活発かなど
製品−市場の連結度
- 共通の顧客や流通チャネルが存在するかなど
企業特殊な連結度
- 共通の工場から製品供給できるかなど
参入国の決定方法
- 戦略的ポートフォリオ単位(SPU)に分ける
- 相互連結度が高い(連結線が多い)国から参入の優先順位をつける
- 相互連結度が同じ国同士は、市場の魅力度と競争優位性の高さで優先順位をつける
戦略的ポートフォリオ単位(Strategic Portfolio Unit : SPU)
- 相互連結した各国市場の塊のこと
グローバル・サプライチェーンの検討
グローバル・サプライチェーン
- グローバルな、調達・生産・流通・販売のサプライチェーンのこと
- 一度、市場に参入するとサプライチェーンの再構築は困難なため、参入意思決定前に検討しておく必要がある
流通チャネルの国別の違い
- 先進国は近代的流通(Modern Trade : MT)が、途上国ほど伝統的流通(Traditional Trade : TT)が多い
- 一人当たりGDPが高くなるほど、MTの比率が高くなる
- 海外展開では、MTとTTの使い分けが課題になる
近代的流通(MT)
- スーパーやコンビニエンス・ストアなどのこと
- メリット
- 日本と同様のチャネル戦略が採れる
- 富裕層や中間層の利用が多い
- デメリット
- 大手小売業の口座開設費や棚代(月額)が高い
- 欧米メーカー(ネスレ、P&G、ユニリーバなど)との競合が激しい
伝統的流通(TT)
- パパママ・ストア(家族経営の小さな商店)のこと
- メリット
- フィーやリベートが不要
- ラストワンマイルの担い手になってもらえる
- 一回小分け販売が多く、柔軟性が高い
- デメリット
- 多数ある店舗への配荷が困難で、二次卸が必要(→インドでデジタル化が進んでいる)
参入モード(参入方法)の選定
参入モードの種類
- コミットメント、リスク、コントロール、潜在利益の低い順から、次のような方法がある
- 間接輸出
- 直接輸出
- ライセンス供与
- ジョイント・ベンチャー
- 直接投資
輸出
間接輸出
- 国内の中間業者(商社)を通じて、自社製品を海外市場に販売すること
- 海外展開の初期段階で多く、一定期間後は直接輸出に移行するケースが多い
- メリット
- 中間業者は豊富な専門知識を有し、リスクは小さい
- 即座に輸出できる
- デメリット
- 不適切な顧客対応
- 現地情報の入手が困難
- マージンが必要
直接輸出
- 自社内の輸出部門を通して、自社製品を海外市場に販売すること
- 進出先に販路を持つ企業と「協同輸出」という方法もある
- メリット
- 適切な顧客対応が可能
- 現地情報を入手が可能
- マージンが不要
- デメリット
- 現地との直接的なやりとりが必要でリスクが増える
ノウハウ提供
ライセンス供与(ライセンシング)
- 報酬やロイヤルティ(使用料)と引き換えに、知的財産の利用権を与えること
- 知的財産としては、製造技術、商標、特許、取引ノウハウなど
- 互いにライセンスを提供し合う「クロスライセンス」という手法もある
- メリット
- 確立されたブランド・技術・ノウハウを利用できる
- 研究開発に専念できる
- 少ない投資で海外市場に進出できる
- デメリット
- ライセンシーが、質を落とした製品を販売してしまう
- ライセンシーが、ブランド・イメージの合わない販売手法をとってしまう
- ライセンシーが、契約終了後にライバルになってしまう
フランチャイジング
- フランチャイザーが研究開発とマーケティングを、フランチャイジーが生産、販売、サービスを担当する方法
- 「参入する側がマーケティングを担当する」点がライセンシングとの違い
- 自社開発のマーケティング手法について、フランチャイジーをトレーニングする必要がある
- メリットとデメリットは、ライセンシングと同様。
契約生産
- 委託元が研究開発、マーケティング、販売、サービスを担当し、委託先に生産のみを行わせる方法
- 先進国企業が、安価な労働力を求めて開発国の企業を選ぶような場合が相当
- 委託元のブランドで生産することを「OEM生産」という
- メリット
- 委託元:生産設備が不要になり、資金的な負担が少ない
- 委託先:生産余力の活用、自社技術水準の向上
- デメリット
- 委託元:生産で利益が得られない
- 委託元:将来、委託先が競合となるかもしれない
ジョイント・ベンチャー(JV)
- 海外の投資家と地元の投資家が共同出資者となり、ベンチャー企業を立ち上げる方法
- 共同出資者は、現地情報や人脈を持つ現地企業の場合が多い
- 発展途上国への進出する場合には、政府規制でJVが必要になる場合がある
直接投資(単独出資)
- 現地の工場を買収するか、海外に自社施設を建設すること
- メリット
- 安価な労働力や原料によるコスト削減
- 海外政府の優遇措置
- 運送費の削減
- 企業イメージの向上(雇用創出)
- 現地化しやすくなる
- デメリット
- 海外労働者の要求
- 膨大な解雇手当(国による)
- 通貨リスク
標準化/現地化の選択
標準化戦略と現地化戦略
- 世界共通の製品(標準化)にするのか、現地に合わせてカスタマイズ(現地化)するのかを選ぶこと
- 現地化のジレンマが原因
- 世界的な標準品であれば、規模の経済性により大きなコスト削減につながる
- 世界的な標準品だけでは、現地の市場に受け入れられないかもしれない
- 現地化のジレンマが原因
標準化戦略のメリット
- 規模の経済性のよるコスト削減
- 世界共通の標準化製品ニーズによる売上拡大
現地化戦略のメリット
- 地域ニーズ対応による売上拡大
- 現地対応によるイノベーション(新たな用途の発見)
グローバル・ブランドの検討
一般的には、グローバル・ブランドを活用する場合、標準化戦略をとる必要が出てきます。
グローバル・ブランド
- 世界的に統一されたブランド
- 例:アップル、アマゾン、マイクロソフト、グーグル、サムスン、コカコーラ、トヨタ、メルセデスベンツ、マクドナルド
グローバル・ブランド戦略
- 世界的な標準化戦略の一つで、規模の経済性を目指した戦略のこと
グローバル・ブランドのメリット
- 規模の経済性によるコスト削減
- テレビCM素材や販促物などを全世界で標準化できるため
- 現地での戦略立案の時間と労力を省き、市場導入期間が短くなるため
- 管理の容易さ
- 世界中で同様の戦略方針を展開するため、管理がシンプルになる
- グローバル・ブランドの一部機能のアウトソーシングの管理も同様
- 市場を横断した露出効果
- 自国で宣伝されているブランドを海外でも見ることで、知名度が強化される
- 現代では、インターネットを通したグローバル・メディアで情報に接する機会が増加している
グローバル・ブランドの成功条件
- 「最善で高級」なポジション
- コストが高くなっても最高の品質を提供し、世界中の上流層に受け入れられるポジション
- 「消費の二極化」により、中流層にも分野よって受け入れられる可能性がある
- 「国」というポジション
- 良い原産国のイメージ(COO効果)を利用したポジション
- 例:日本といえば自動車や家電、イタリアといえばファッション等
- 純粋な機能的便益
- 製品の客観的な判断基準となる属性が優れていること(例:自動車の燃費)
- 逆に、情緒的便益は文化的背景のために、他国で受け入れられにくい(=現地化が必要になる)
消費の二極化
- 消費者の関与の高低によって高額品と低額品が売れる現象
- 例:スーパーでは半額品を購入するが、自動車は高級車を購入する
COO(County of origin)効果
- 原産国のイメージが消費者に与える影響
- 例:1950年代の日本のイメージは「cheap(安物)」だったが、70年代から「高品質」に転換した
知識移転の選択
- 模倣しにくい暗黙知を、どのように現地に移転し共有するのかを選ぶこと
知識の例
- 顧客ニーズの知識
- 商品開発の知識
- プロモーションのノウハウ
- 流通チャネル構築のノウハウ
ということで、グローバル・マーケティングについてまとめてみました。
ここに書いたことは、かなり概要に過ぎませんし、実際には進出先の現地調査が必須でしょうね。日本に住んでいる分には常識だったことが、海外では常識ではなかったという例はたくさん存在しているでしょうし。この記事は、「何を考える必要があったかな?」という場合に思い出していたでければ幸いです。
ざっくり学ぶ記事は他にもありますので、ご参考になれば嬉しいです。
ざっくり学ぶシリーズ