こんにちは。やまもとです。
ここのところ、マーケティング検定のテキストを見ながら、マーケティングの各分野をざっくり学ぶ記事を書いています。学習した内容を思い出したり、知らない言葉の意味を調べたりするときに使ってもらえれば嬉しいです。詳しい内容を知りたい方は、別の記事かウェブで検索していただいた方が時間を無駄にしないと思います。
今回は、ソーシャル・マーケティングについてまとめてみたいと思います。ただ、ソーシャル・マーケティングは比較的新しいコンセプトで、方法論としてまとまったものではありません。そのため、主に概念の説明を中心にまとめたいと思います。
念の為に書いておきますが、ソーシャル・マーケティングは、ソーシャルメディアを使ったマーケティングのことではありません。
ソーシャル・マーケティングの背景
ソーシャル・マーケティングでは、さまざまなコンセプトが時代を経て内包されています。
1950年代〜60年代、マーケティング・コンセプトの浸透
- 販売者の視点から顧客の視点へと、発想転換が起った。
1960年代、マネジリアル・マーケティングの確立
- 経営者視点で、最適なマーケティング・ミックスを構築するという方法論が確立した。
1960年代後半〜、コンシューマリズム(消費者主権)の加速
- レイチェル・カーソン著「沈黙の春」(1962)を契機として、有害添加物や欠陥製品、公害などからの消費者保護が加速した。
- この流れを受け、日本では、消費者保護法制定(1986)、国民生活センター・消費者センター設置(1970)、PL法制定(1994)、消費者庁発足(2009)、などが起きた。
2000年代、CSR(企業の社会的責任)が浸透
- 企業に社会に共存する一員としての意識が浸透した。
- しかし、マーケティングに批判的な立場で、儲からずとも企業が当然行うべきことという認識だった。
- そのため、法令遵守と環境配慮が取組の中心であった。
2011年、CSV(共通価値の創造)の発表
- CSRが経済的価値を必ずしも含まないことに対し、社会的価値を創造することで経済的価値を創造するというCSVが浸透し始めた。
2015年、SDGs(持続可能な開発目標)の発表
- 国連が2030年までの社会的課題として、17の目標と169項目の達成基準を発表。
- 企業が社会的課題を意識し始める。
2018年頃〜、ESG(環境・社会・統制)投資の浸透
- 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)が、投資家の判断材料として浸透し始める。
- 企業が投資家目線としてESGを意識し始める。
ソーシャル・マーケティングの定義
- 「顧客」と「企業」と「社会」の相互利益がもたらされる関係の構築を目指すマーケティング
- 視点は「現在」にあり、やや短期的
ソーシャル・マーケティングの製品
社会的プロダクト
- 社会的アイデア
- 信念・・・事実に対する認識(例:ソーシャル・ディスタンス)
- 態度・・・肯定・否定の評価(例:絶対にマスクはしない!)
- 価値観・・正しさに関する考え方
- 社会的習慣
- 単一行為・・・・(例)健康診断を受ける
- 行動パターン・・(例)禁煙する
- 有形の対象物
- 例:キャンペーン・グッズ
ソーシャル・マーケティングの分類
- 非営利組織のマーケティング(狭義のソーシャル・マーケティング)
- 社会志向のマーケティング(ソサイエタル・マーケティング)
- 社会責任のマーケティング
- グリーン・マーケティング(環境マーケティング、エコロジカル・マーケティング)
- 社会貢献のマーケティング
- コーズ・リレーテッド・マーケティング
- 社会責任のマーケティング
非営利組織のマーケティング(狭義のソーシャル・マーケティング)
- 営利企業のマーケティングの理念や技法を、非営利組織にも応用しようというもの
- コトラーの定義
- 公衆衛生・治安・環境・公共福祉(コーズ)の改善を求めて、企業あるいはNPOが行動改革キャンペーン(コーズ・プロモーション)を企画あるいは実行するための支援手段のこと(Kotler & Lee, 2005)
- 例:社内マナー広告
- 非営利組織の例
- 病院
- 教会
- 政府・公共機関
- 美術館
- 慈善団体など
コーズ・プロモーション
- コーズ(社会的主張)を普及するために行われるプロモーション
- 目的
- コーズの普及
- 多く場合、非営利組織によって展開される
- 例:ピンクリボン運動(乳がん検診の早期受診の啓発キャンペーン)
社会志向のマーケティング(ソサイエタル・マーケティング)
- 企業のマーケティングの社会的側面(社会的責任、社会倫理)に注目するマーケティング
- 定義
- 企業がターゲットとなる顧客のニーズや利益を正しく理解し、消費者と社会の幸福を維持・向上させ、顧客の要望に沿った満足を競合企業よりも効果的かつ効率的に提供するという考え方
- 考えられた理由
- 消費者の欲求を満たすことが、長期的視点からすると「消費者や社会の利益に貢献しているとは必ずしも言えない」という批判があったため
社会責任のマーケティング
- 「本業の社会責任」のマーケティング
- 目的
- 本業の製品やサービスにおいて、その安全性や環境への配慮といった社会責任を果たしていることを広める
- 観点
- 自社が社会に対してどのように責任を全うしているのか(「自分たちは悪くない」と主張)
- 例:ファーストフード業界でサラダをメニューに加える(健康配慮)
- 例:使い捨てプラスチック製ストローから紙ストローへ移行する(環境配慮)
- 自社が社会に対してどのように責任を全うしているのか(「自分たちは悪くない」と主張)
グリーン・マーケティング
- (社会責任のうち)環境問題を中心課題とするマーケティングのこと
- 以前は、企業の活動(環境汚染を伴う活動など)を抑制することで解決していた
- 近年は、企業だけでなく消費者にも環境負荷を削減する行動が求められている
- 関連用語
- グリーン・コンシューマー
- 環境を配慮する行動が伴う消費者
- エコ製品・エコサービス
- CO2ガス排出量を減らした製品や、海洋汚染対策としてのレジ袋有料化など
- グリーン・サプライチェーン・マネジメント
- 循環型経済システムと環境負荷削減を盛り込んだ、環境保全型の製品供給の仕組み
- 構成要素
- 重要性の伝達
- グリーン・デザイン(環境配慮型設計)
- グリーン・オペレーション(環境配慮型業務プロセス)
- グリーン・コンシューマー
社会貢献のマーケティング
- 「本業以外の社会貢献」のマーケティング
- 目的
- 社会責任だけでなく、本業以外のメセナ(文化支援活動)やフィランソロピー(直接寄付活動)で社会に貢献していることを広める
- 観点
- 自社がどのようにして社会的価値に貢献しているのか(「自分たちは良い事をしている」と主張)
- 考え方
- 社会貢献コストは、企業の戦略的な優位性を生み出す(Porter and Kramer, 2002)ので、社会問題と事業戦略の統合が必要
コーズ・リレーテッド・マーケティング
- 企業がコーズ(社会的主張)を利用して、自社の製品やサービスをプロモーションすること
- 目的
- 企業活動としての効果(利益)
- 企業が寄付などを行う
- 例:「い・ろ・は・すの森活」プロジェクト(水資源保全団体への売上の一部を寄付)
メセナ(文化支援活動)
- 企業が資金を提供して、文化・芸術活動を支援すること
フィランソロピー(直接寄付活動)
- 企業が慈善団体やNPO法人に、直接寄付によって支援を行うこと
- 企業のビジネスに関連しない(コーズ・リレーテッドマーケティングは関連する)
- 前年度の収益によって予算額を決めるなど、企業業績に左右される
- 株主からプレッシャーがあり、寄付対象は事業目標や目的に沿ったものが選出される
- メリット
- 顧客や従業員に対して、企業のイメージや関心を高められる
- 間接的に、企業のブランド力向上やポジショニング強化が見込まれる
- 地域や社会の中での名声や評判を高める
サスティナブル・マーケティング
- 長期的な「本業による社会貢献」のマーケティング
- 消費者の長期的利益や社会的利益と企業の長期経営計画を統合する必要がある
- 例:ガソリン車の代わりに、環境配慮した高性能な次世代自動車を開発し、持続可能な高収益事業を検討する
ということで、ソーシャル・マーケティングについて、まとめてみました。ほとんど、概念整理ですね。
先述したように、ソーシャル・マーケティングは比較的新しい分野なので、これからも頻繁に新しい概念が追加されていくでしょう。
方法論がまだ定まっていないようですが、コトラーの著書には何か記載があるかもしれません。読んでみようかなぁ。
以前のざっくり学ぶ記事はこちらです。
ざっくり学ぶシリーズ