こんにちは。やまもとです。
前回の「ざっくり学ぶ、マーケティング・コミュニケーション」ではマーケティング・コミュニケーション用語をリスト化しました。
やってみたら、全体を俯瞰するにはちょうど良かった気がするので、今回も同様に流通に関するマーケティング用語をリスト化してみようと思います。
今回も、マーケティング検定2級のテキストをベースにしています。
目次
流通経路の2つの見方
消費者側から見た場合「流通チャネル」、企業側から見た場合「マーケティング・チャネル」と言います。
流通チャネル
- 企業の製品・サービスが、顧客の手元に渡るまでの流通経路のこと
- 多種多様な経路は、製品・サービスに接する窓口として機能している
- 「物流」「情報流」「商流」の3つの機能がある
- 3機能は、必ずしも同時に発生するわけではない
マーケティング・チャネル
- 企業側から見た流通経路のこと
- 経路ごとに、取引や管理の仕方が異なるため必要になる
- 「直接流通」と「間接流通」がある
流通チャネル
流通チャネルの機能
流通チャネルには、「物流」「情報流」「商流」の3つの機能があります
物流
- 作り手と買い手との間に生じる、空間的・時間的なギャップを埋める役割
- 空間的ギャップ:工場→倉庫→小売店
- 時間的ギャップ:前日生産→クリスマス需要
- 基本的な手段は、「保管」と「輸送」
情報流
- 作り手と買い手の間に起こる、情報のやりとりのこと
- 例:受発注情報、販売予測情報、店頭での詳細説明
商流
- 製品・サービスの売買や取引の流れのこと
- お金の流れ
流通チャネルの構造
主に、生産者→流通業者→顧客、という流れのことですが、いくつかのパターンが存在します。
流通チャネルの類型
- 直接流通
- 生産者→顧客
- 間接流通
- 生産者→小売業者→顧客
- 生産者→卸売業者→小売業者→顧客
直接流通
- 生産者が、最終的な顧客に直接販売する方法
- 例:直売所、インターネット通信販売
間接流通
- 生産者と顧客の間に、流通業者が介入して、販売業務を委託する方法
選択基準
- ターゲットとなる最終顧客(最終顧客に届くチャネルを選ぶ)
- 取引先として利用できる流通業者(新たに開拓するとコスト高)
- 競争企業が採用している流通チャネルのパターン(競合と同じチャネルでは差別化困難)
- 自社の経営資源(自社で、小売機能・卸売機能を持てるか)
マーケティング・チャネル
マーケティング・チャネルの構造
基本的には、流通チャネルと同様に「直接流通」「間接流通」に分類されますが、具体的には流通チャネルとは異なるパターンが存在します。
マーケティング・チャネルの類型
- 直接流通
- ダイレクト・マーケティング
- 直接販売(人的販売)
- 間接流通
- 市場取引システム(水平的流通システム)
- 垂直的流通システム(VMS:Vertical Marketing System)
- 企業型システム
- 契約型システム(FCやVCのこと)
- 管理型システム
ダイレクト・マーケティング
- 情報媒体を利用して直接販売する方式
- ダイレクトメール、カタログ、雑誌、インターネットで情報提供
- 電話、郵便、メールで受注
市場取引システム
- 市場(いちば)での取引のこと
- 例:東京都中央卸売市場
- 関係者は独立して都度交渉で取引し、チャネル形成への関与度は低い
垂直的流通システム
- 継続的な組織による取引のこと
- 自社製品を意図通りに統制したメーカーが志向する
- 「企業型システム」「契約型システム」「管理型システム」に分けられる
企業型システム
- 生産と流通が単一資本で統合された「組織取引」
- システム構成員(企業)が明確な共通目標を持つ
- 長所:統制できる
- 短所:環境変化に対応しにくい、投下資本が負担になる
- 例:自動車ディーラー、デザイナーズブランドのアパレル、寝具やベッド
契約型システム
- 構成員(店舗など)が契約関係で結ばれたシステム
- 契約に従って、共通目標を設定する
- フランチャイズ・チェーン(FC)やボランタリー・チェーン(VC)のこと
管理型システム
- ブランド力や情報力を組織の求心力として取引関係を管理するシステム(資本提携はない)
- 長所:投下資本が比較的少ない、環境変化に柔軟に対応できる
- 例:コンビニと弁当メーカー、SPA企業と現地工場
フランチャイズ・チェーン
- 商品や経営ノウハウを提供する本部と、資本と労働力を所有する加盟店の1対1の契約関係
- 縦の関係が強く、統制しやすい
- 例:コンビニ
ボランタリー・チェーン
- 中小小売業者が、共同仕入れ・販促・教育研修の共同する緩やかな組織
- 横の関係が強く、統制しにくい
- 例:全日本食品株式会社
流通業者の利用
流通業者とは
小売業者と卸売業者のことで、別名「商業者」と言います。
商業とは
- 商業者が担っている活動のこと
小売業者(リテール)
- 顧客に直接、製品・サービスを販売する流通業者
卸売業者
- 再販売や業務利用の事業者に対して、製品・サービスを販売する流通業者
- 小売業者への販売だけでなく、企業間取引を仲介している流通業者も含む
- 多くの場合、多段階ネットワークを形成する(2次卸売、3次卸売が存在する)
流通業者を利用するメリット
メリット
- 「消費の小規模分散性」に対応できる
- 販売網を整備しなくて良い(整備資金不要、自前リスク低減)
- 事業展開スピードが上がる(販売網の整備期間が短縮、資金回収期間の短縮)
- 「社会的品揃え」を実現できる
デメリット
- 販売データを収集できない
- 店頭価格や店頭販売方法をコントロールできない
- 収益の一部を失う
- 店舗間の製品や要員を移動・調整できない
消費の小規模分散性とは
- 消費者が、地理的に広い範囲に分散していること
- 反対に、生産は工場に集中できる
社会的品揃えとは
- 多数の企業の製品・サービスを幅広く取り揃えること
- 社会的品揃えと事業規模拡大との両立が課題
- 解決例:店舗面積拡大で分散需要の吸引 → 百貨店
- 解決例:自動車移動を利用した需要吸引 → ショッピングモール
- 解決例:インターネットを利用した需要吸引 → オンライン・ショップ
- 解決例:販売と仕入れの分離 → チェーン・ストア
- インフラの整備状況が大きく影響する
チェーン・ストア方式とは
- 共通の標準化された商品を本部で一括仕入れし、販売を多数の店舗で分散して運営する方式
- 一括仕入れが、「規模の経済性」を実現する。(大量仕入れで割引される)
- 代表例:コンビニ
流通業者の機能
基本的機能
- 保管:倉庫や店舗に商品を「在庫」として留めておく機能
- 輸送:メーカーから保管場所へ、保管場所から消費者へ商品を「配送」する機能
在庫の制約
在庫は、基本的に保管スペースの大きさに制約されます。しかし、メリットも存在するため、保管スペースを効率的に利用するために「在庫回転率」という考え方を用います。
在庫のメリット
- 物流コストの削減
- 受発注・在庫管理の負荷低減
- 需要変動・リードタイムへの対応
在庫のデメリット
- 資本効率の悪化(広い倉庫が必要など)
- 新製品投入時の余剰在庫(売れず残る商品)
在庫回転率
- 抱えている在庫がどのくらいのペースで回転しているかを数値化したもの
- 定義:在庫回転率=売上額(生産額)÷在庫額
- 在庫回転率が高いほど在庫を抱えないため、在庫のデメリットが減る(メリットも減る)
- 在庫のメリットを残しつつ、在庫回転率を高める仕組みが必要
配送の工夫
在庫のメリットを残しつつ在庫回転率を高めるために、さまざまな配送の工夫が取り組まれています。
多頻度小口化
- 多品目小ロットの製品群を頻繁に配送する配送形態(JIT:Just In Time方式)
- 受発注処理と生産工程と流通プロセスの同期化が必要
- オーダー・エントリー・システム(OES)が必須
オーダー・エントリー・システム
- 生産工程から流通プロセスまでの管理と受注情報の処理を結びつけたシステム
- 必要条件① 小売店の発注-納品リードタイムの短縮
- 十分な在庫の確保
- 必要条件② 発注-受注リードタイムの短縮
- 高頻度の発注が可能
- 余剰在庫の削減(次の受注までの在庫で十分になる)
- 必要条件③ 生産工程の時間サイクルの短縮
- 必要在庫の確保
- 余剰在庫の削減(次の納入までの在庫で十分になる)
- 必要条件① 小売店の発注-納品リードタイムの短縮
コンビニの配送システム
- 店舗面積が小さく、店舗に十分な在庫を置くことができないため、多頻度小口輸送システムが確立
- 当初、卸売業者が直接配送していたが、ミスや事故が相次ぎ、「共同配送」(配送センター集約)の仕組みが発達
- POSシステムによる売れ筋商品と死に筋商品のリアルタイム監視により、的確な発注と在庫管理を実現
販売ロジスティクスのチェーン化
流通系列化
- 流通業者が、メーカー専売の流通チャネルとなること
- メーカーが流通業者を囲い込み、競争優位性を獲得しようとする方法
- 基本的に卸段階が資本統合されている
流通系列化の3タイプ
- 販社型:卸売を垂直統合、小売は通常取引(例:洗剤業界)
- 直販型:卸売を内部化、小売を垂直統合(例:自動車業界)
- 一貫型:卸売を垂直統合、小売は商品制限・店会制(例:家電業界)
流通系列化の効果
- 販売拠点確保の投資額減少
- 一手販売権やリベート制による費用だけですむ
- 流通業者の意欲持続化
- リベートの工夫などで、流通業者が優先的に販売する
- 流通業者とリスク分担
- 独立経営なので、在庫リスクは系列店が持つ
流通系列化の限界
- 流通業者の意思決定の独立
- 系列店は独自に意思決定するため、メーカーは施策の説得コストがかかる
- 流通業者の存在意義の低下
- メーカー依存度が高まり、社会的品揃えを作る本来の力が弱まる
- 消費者にとって価値が低い
- メーカー都合の仕組みなので、消費者にとっては価値があまりない
系列店システムの行き詰まり
行き詰まりの理由
- 「消費における選択肢の拡大」のため
- 「流通プロセスにおける時間の競争の拡大」のため
消費における選択肢の拡大
- 購入できる製品の数と、購入できる場所の数が増大していること
- コンビニ乱立、ドラッグストアのコンビニ化、ECサイトの台頭など
- 一方、経営資源の余裕がなく、1社で社会的品揃えを実現するのは限界に
- 地域の有力小売店の系列化で、地域市場を占有できた時代は終焉した
流通プロセスにおける時間の競争の拡大
- 4Pに加え、タイミングを合わせる重要性が増してきていること
- 例:新製品開発完了前から広告を流し、発売日には店頭に並ぶ仕掛けが顧客獲得に必要
- 原因1:新製品の開発・導入サイクル短期化
- 原因2:技術の平準化
製販連携の広がり
製販連携とは
- メーカーと小売業者が連携すること
- 流通系列化と異なり、販路の占有化ではなく、在庫回転率の向上が目的
- メーカー主導の場合:カテゴリー・マネジメントなど
- 小売業者主導の場合:プライベート・ブランドなど
カテゴリー・マネジメント
- 商品カテゴリーレベルの売場全体で売上や利益の最大化を図る手法
- メーカーが、他社製品を含めて売場全体の活性化を促し、自社製品の売上増を図る
プライベート・ブランド
- 流通業者が開発主体となって、小売店舗で販売するブランド
- 例:セブンプレミアム、トップバリュ
調達ロジスティクスのチェーン化
チェーン化の観点(統合と取引)
- 自社内への「統合」
- 事業に必要な業務を自社内(自社グループ内)でまかなうこと
- 例:自社工場で部品を内製する、内製化
- 事業に必要な業務を自社内(自社グループ内)でまかなうこと
- 市場での「取引」
- 事業に必要な業務を外部企業へ委託すること
- 例:原材料や部品を調達する、販売を委託する、アウトソーシング
- 事業に必要な業務を外部企業へ委託すること
統合と取引の選択条件
- 生産コスト
- 資源蓄積
- 取引コスト
生産コストの条件
- 統合と取引を比較して、生産コストがより低い方を選択すること
- 最適生産規模が大きくなる事業を統合すると、生産コストは上昇してしまう
資源蓄積の条件
- 内製化することで、技術やノウハウを獲得・保持するのかを選択すること
- 獲得した事業の成長性、技術やノウハウの流出なども加味する必要がある
取引コストの条件
- 金銭以外の手間(取引コスト)をかけるのかを選択すること
- 「取引」を「統合」に切り替えても、全ての取引コストが消滅するわけではない
基本的な取引コスト
- 取引相手を探し出すための探索コスト
- 収集した情報をもとに折衝するための交渉コスト
- 取引結果を検証するための監督コスト
取引相手の探索コスト
- 仕入れ先や委託先を見つけ出すのにかかるコスト
- 探索コストを下げるために、既知の取引相手を選びやすくなる
取引条件の交渉コスト
- 仕様の伝達、供給可能性、価格、納期、数量、納入方法、支払い、保証などと取り決めるコスト
- 交渉コストを下げるために、ある程度情報がある取引実績のある相手を選びやすくなる
取引結果の監督コスト
- 取引条件が実際に守られているかを確認する作業のコスト
- 監督コストを下げるために、信頼できる相手を選びやすくなる
取引コストの発生原因
- 取引相手や取り巻く環境に関して完全な情報を得られないこと
- 取引する当事者が「機会主義的行動」をとること
機会主義的行動
機械主義的行動とは
- 相手よりも自らに有利な状況を作り出し、取引を有利に運ばせようとする動き
- これを防ぐために、取引条件を細かくしたり、入念に監視すると、取引コストが上昇する
- 全ての取引で発生するわけではない
機会主義的行動の発生条件
- 取引される製品・サービスが複雑な場合
- 取引相手の数が限定されている場合
複雑な製品・サービスの機会主義的行動
- 取引条件を取り決める項目が多く、取引相手は様々な項目で手を替え品を替え少しでも有利にしよう行動できる
- 標準仕様が決まっている製品・サービスは、取り決め項目が少なく、取引相手の機会主義的行動は起きにくい
限定された取引相手の機会主義的行動
- 取引相手の選択肢が少ないと、その取引相手を選ばざるを得なく、取引相手は自社に有利な条件を引き出そうとする
- 取引相手の選択肢が多いと、相互に競争させることができ、取引相手は機会主義的行動を取りにくくなる
サプライチェーン・マネジメント(SCM)
サプライチェーン・マネジメントの定義
ロジスティクス
- モノ(商品)と情報(受発注など)を統一的に管理するという考え方。SCMの祖先。
- 一企業を中心とした管理手法のことで、企業間の協働は含まれていない
- 調達ロジスティクスと販売ロジスティクスを組み合わせたもの
- 調達ロジスティクス:供給元のモノと情報の管理
- 販売ロジスティクス:出荷先のモノと情報の管理
サプライチェーン
- 供給連鎖(直訳)
- 複数企業からなる調達チェーンと販売チェーンをつなげたモノと情報の流れのこと
- 調達チェーン:材料供給業者・部品供給業者・生産者など
- 販売チェーン:卸売業者・小売業者・顧客など
サプライチェーン・マネジメント(SCM)
- サプライチェーンの流れを統合的に管理し、需要に合わせて商品を提供しようとする仕組み
- 実現するには、需要予測の高精度化・受発注待ち時間の削減が必要
- そのため、POSデータの共有、自動在庫補充、自動配送計画など企業間の協働が必要になる
サプライチェーン・マネジメントの観点
サプライチェーンを構築するには、「延期」するのか「投機」するのかの意思決定が必要になります。
延期
- 実需が把握できるまで製品の生産を先送りにする意思決定のこと
- 実現方法
- 受注生産、分散生産、分散在庫、短いサイクル・タイム(発注−納品−販売の時間)
- 特徴
- 分散生産のため規模の経済性は働かない
- 実需を把握するため、需要予測精度は高い
- 小売業者にとって望ましい意思決定
- 近年、消費の多様化により求められている
投機
- 需要予測に基づいて早期に予め生産してしまう意思決定のこと
- 実現方法
- 見込み生産、集中生産、集中在庫、長いサイクル・タイム(発注−納品−販売の時間)
- 特徴
- 集中生産のため規模の経済性が働く、かつ在庫リスクは流通業者に負わせる
- 実需を待たないため、需要予測精度は低い
- メーカーにとって望ましい意思決定
- 従来、メーカー主導のチャネルで支配的だった
サプライチェーン・マネジメントの情報技術
サプライチェーンを構成する企業間で即時に情報伝達されることが必要なため、SCMには情報技術が不可欠です。情報技術により、需要予測が実需に近づき、生産時間が短縮され、「延期」による意思決定が可能になってきています。
利用されている情報技術
- POS(Point of Sales)・・・商品販売データシステム
- EDI(Electronic Data Interchange)・・・受発注関連のデータ交換システム
- FMS(Flexible Manufacturing System)・・・多品種製造の製造システム
- RFID(Radio Frequency Identification)・・・非接触認証タグ(発展途上、SCM効率化が期待される)
サプライチェーン・マネジメントの効果
- 迅速に顧客ニーズに応えられる
- 顧客満足が高まり、売上増加に貢献できる
- 正確な需要予測で、市場リスクを回避し、無駄を削減できる
- サプライチェーンの時間が短縮され、市場リスク回避・無駄の削減により、コストが削減される
- サプライチェーン全体の物流コストが削減され、チェーン全体の利益増加につながる
サプライチェーン・マネジメントの課題
- 企業間の情報基盤整備に、時間と費用がかかる
- 企業間のWin-Win関係の継続を保証するものではない(継続しなければ、取引関係が硬直化する)
- サプライチェーンの全体最適化が、個別企業の最適化を犠牲にするため、不安定になりやすい
- SCMが、顧客に恩恵を与えられるかまでは分からない
新しい流通業者の登場
第3の流通業者(3PL)
- 個々の製造/販売事業者から独立した物流全体(保管、配送、輸出入など)を一括請負する事業者
流通関連のポイントをリスト化してみました。
やってみると、やまもとはいくつか知らない単語がありました。
これだけでは詳細は分からないと思いますが、学習した内容を思い出すきっかけになればと思います。