こんにちは。やまもとです。
またまた、簡単に復習するための「ざっくり学ぶ」記事を、サービス・マーケティングについて書いてみたいと思います。
今回も、マーケティング検定2級のテキストをベースにしています。
サービスとは
サービスの定義
- 有体物(モノ)と形のない無体物を組み合わせて行う取引のプロセス
サービスの分類
- 人の身体に向けられるサービス(例:美容院、レストラン、喉痛、エクササイズ)
- 人の心・精神・頭脳に向けられるサービス(例:教育、コンサル、映画、美術館)
- 物理的な所有物に向けられるサービス(例:貨物輸送、造園、修理、クリーニング)
- 無形資産に向けられるサービス(例:金融、保険、会計処理、プログラミング)
サービスの特性
- 無形性
- 生産と消費の不可分性(協調性・同時性)
- 品質の変動性(ばらつき性)
- 消滅性
無形性
- サービスが物理的な形状を持たないこと
- 顧客は、事前に見たり触れたりできない(事前に品質を知覚できない)
生産と消費の不可分性(協調性・同時性)
- サービスの生産と消費が同時に起きること
- サービス提供者自身がサービスの一部となる
- 顧客も「共同生産者」となり、サービスに影響を及ぼすことがある(例:医者と患者)
- 顧客の役割を明確化する必要がある(例:禁止事項を決めるなど)
品質の変動性(ばらつき性)
- 提供者の能力・体調や顧客の協力度合いに影響され、サービス品質が一定に保てないこと
- マニュアルを用意したり、サービス提供者のトレーニングが必要になる
消滅性
- サービスを在庫として保管できないこと
- 供給をコントロールができないので、需要をコントロールする必要がある
サービスの品質
- サービスの品質は、「不可分性」から顧客の「知覚品質」に委ねられている
- 製品の品質のように、出荷時に品質をコントロールすることはできない
- サービスでは、顧客の知覚をコントロールしなければならない
品質測定方法:SERVQUAL(Service+Quality)
- サービスの知覚品質を測定する評価尺度
- 5次元で測定する
- 触知性(tangible、有形性)
- 信頼性(reliability)
- 反応性(responsiveness)
- 保証性(assurance、確実性)
- 共感性(empathy)
- 測定限界
- 初めて購入する人を排除できない(期待が高すぎる)
- 「期待」を購入前に測定できない
- 期待と知覚の差が顧客満足度と異なる→JCSI(日本版顧客満足度指数)がある
触知性(有形性)
- 評価内容
- 物理的な施設、設備、従業員の外見
- 調査項目例
- 「最新の設備を備えている」
- 「従業員の身なりがきちんとしている」
信頼性
- 評価内容
- 約束通りのサービスを提供する能力
- 調査項目例
- 「約束した時間にサービスを提供する」
- 「正確に注文を記録する」
反応性
- 評価内容
- 役に立とうと機敏にサービスを提供する意思
- 調査項目例
- 「従業員は機敏にサービスを提供する」
保証性(確実性)
- 評価内容
- 従業員の知識、礼儀、信頼を得る能力
- 調査項目例
- 「従業員との取引に安心感がある」
- 「従業員は礼儀正しい」
共感性
- 評価内容
- 企業の顧客への気遣いや顧客一人ひとりへの注意力
- 調査項目例
- 「顧客一人一人に注意を払う」
- 「顧客の最大の関心事を認識している」
サービスの顧客満足
顧客満足を決める要因とは
期待不一致モデル(オリバー,1980)
- 期待水準と知覚水準がどのくらい乖離しているかによって顧客の満足が決まるというモデル
- 期待>知覚 → 不一致 → 不満足
- 期待=知覚 → 一致 → 概ね満足
- 期待<知覚 → 不一致 → 満足
- サービスの「同時性(不可分性)」のため、サービスの提供時の期待と知覚で満足度が決まる
期待と知覚の5つのギャップ
- 顧客の期待と企業側(経営陣)の知覚のギャップ(聞き取りギャップ)
- 企業側(経営陣)の知覚とサービスの品質仕様のギャップ
- サービスの品質仕様とサービスの提供方法のギャップ(提供ギャップ)
- サービスの提供方法とサービス内容の伝達のギャップ(コミュニケーション・ギャップ)
- 顧客が期待したサービスと知覚したサービスのギャップ
顧客の期待と企業側(経営陣)の知覚のギャップ(聞き取りギャップ)
- 原因
- 顧客の期待を企業側が正しく理解できていないこと
- 対策
- 適切な調査方法の選択
- 調査結果を経営陣に届ける仕組み
- 現象例
- 病院で患者が美味しい食事を望んでいると考えても、実際には看護師の対応に関心がある
企業側(経営陣)の知覚とサービスの品質仕様のギャップ
- 原因
- 経営陣がサービスの明確な基準を定め切れていないこと
- 対策
- 現場の声を基に、具体的に設計する
- 従業員が顧客の声を聞く仕組みを設計する
- 現象例
- 「迅速に動くように」と伝えたが、具体的にどうするかは示していない
サービスの品質仕様とサービスの提供方法のギャップ(提供ギャップ)
- 原因
- 従業員の管理に失敗している(従業員数不足、能力不足、矛盾した指示)
- 需要と供給の管理に失敗している(供給力不足)
- 顧客の管理に失敗している(他の顧客による雰囲気の破壊)
- 対策
- 従業員数の確保、教育訓練、手順のマニュアル化、矛盾した指示の解消
- 予約制、入場制限、従業員数の増加、需要の移動(閑散期をお得にする)
- 会員制、ドレスコード、物理的に敷居を高くする
サービスの提供方法とサービス内容の伝達のギャップ(コミュニケーション・ギャップ)
- 原因
- 企業が顧客に伝えていた内容や水準にサービスが達していないこと(誇大広告)
- 対策
- セールストーク、広告、パンフレットなどを実態に合わせる
- 従業員のスキル別の価格設定(過度に期待させない)
顧客が期待したサービスと知覚したサービスのギャップ
- 原因
- 消費者がサービスの品質を正しく理解できていない
- 対策
- 上記4つのギャップを測定し、要因を解明して是正する
顧客満足を回復するには
サービス・リカバリー
- サービス提供に失敗した後でも、問題に適切に対応することで顧客満足度が向上すること
- 失敗しない場合よりも、顧客満足度が高くなる可能性もある
- 顧客に苦言を言わせ、その場で改善する権限を従業員に持たせている企業は、売上・利益が高い
- しかし、苦言を言う顧客は少ない。大抵は、黙ってスイッチしたり、我慢して利用している。
- だから、「苦情が少ない」≠「満足度が高い」と考え、苦情をサービス改善に活かすことを考えるべき。
公正理論
- 顧客満足の視点から、3つの尺度でサービス・リカバリーの公正性を評価する理論
- 分配的公正(distributive justice)
- 手続き的公正(procedural justice)
- 相互作用的公正(interactional justice)
分配的公正
- サービスの失敗によって顧客が失ったのと同じ資源をサービスリカバリーで補償すること
- 例:レストランで間違った料理を正しい料理と取り替える
手続き的公正
- 失敗への対処が公正な手続きのもとで行われたかどうか
- 例:前回と今回で対応の仕方が異なると不信感を抱く(=対応の均等化が必要)
相互作用的公正
- サービス・リカバリーの担当者が顧客に対して納得のいく謝罪をしたかどうか(コミュニケーション評価)
- 失敗の原因・今後の対応の説明に加え、サービス提供者の態度にも注意が必要
顧客ロイヤルティを高めるには
サービス・プロフィット・チェーン
- 従業員満足の向上が、サービス品質の向上を通して顧客満足を上げ、最終的に企業の収益につながるとした連鎖モデル
- 従業員資産のマネジメントと顧客資産のマネジメントが連動している
- サービス提供企業が収益性や成長性を改善したいなら、まず従業員マネジメントに取り組むべきことを示唆している
顧客満足と顧客ロイヤルティの非線形性
- 顧客満足が高いほど、顧客ロイヤルティが高いわけではないこと。比例しないこと。
- 顧客満足度の違いによる顧客行動の違い
- 顧客満足度:低 → 顧客は企業を見捨て、時には悪い評判を流す
- 顧客満足度:中 → 基本的に満足しているが、さらに良いサービスがあればスイッチする(サイレント・マジョリティ)
- 顧客満足度:高 → 高い確率で再購入し、好意的な評判を流すこともある(顧客ロイヤルティが高い)
コミュニティ・マーケティング(ファン・マーケティング)
- 顧客離反を防ぐために、顧客ロイヤルティを醸成するためのマーケティング
- ロイヤルティの高い顧客は、価格に左右されず、他の消費者に推奨してくれる
サービスの設計
サービス提供の仕組みを設計する
サービス・デリバリー・システム
- 顧客に価値を提供するための仕組み。3つ要素から構成される。
- バック・ステージ
- フロント・ステージ
- サービス・エンカウンター
バック・ステージ(バック・オフィス)
- 顧客から見えない部分のこと
- 技術的なコア部分のこと
フロント・ステージ(フロント・オフィス)
- 顧客から見える部分のこと
- 物理的な施設・設備と、接客する従業員のこと
サービス・エンカウンター
- フロント・ステージのうち、顧客との接点(「真実の瞬間」)のこと
- サービス・デリバリー・システムの効果がこの1点に集約される
- 顧客がサービスの品質や満足を知覚するため、チャンスにもリスクにもなる
サービス・デリバリー・システムの設計の観点
- 顧客の期待水準まで、従業員のトレーニングをすること
- フロント・ステージとバック・ステージの連携をスムーズにすること
- 顧客同士の相互作用をコントロールすること(年齢制限、分煙、ドレスコードなど)
サービス提供の需給を設計する
需要量をコントロールする方法
- 差別化された価格設定(例:ダイナミック・プライシング)
- オフ・ピーク需要の掘り起こし(例:イベント、割引)
- 補完サービスの展開(例:ATM、空港ラウンジ)
- 予約制
供給量をコントロールする方法
- パート・タイム従業員の雇用
- 従業員の担当外業務支援
- 顧客への業務移転(例:セルフレジ)
- 施設開発による供給増加計画
- 他のサービス提供者とのリソース共有
サービスの新しい考え方
グッズ・ドミナント・ロジック(Goods Dominant Logic : GDL)
- 顧客にとっての価値は「モノ(商品)」にあり、顧客がそれに対して金銭を支払うことで、企業と顧客の間に「交換価値」が生まれるという考え方
- 価値の源泉=商品(Goods)
- 生じる価値=交換価値
- モノとサービスを分けて考える
サービス・ドミナント・ロジック(Service Dominant Logic : SDL)
- 企業が交換するのはすべて「サービス」(モノはサービスの一部)であり、顧客がそれを使用することで「使用価値」や「経験価値」が生まれるという考え方
- 価値の源泉=サービス
- 生じる価値=使用価値、経験価値
- モノはサービスの1要素と考える
ということで、サービス・マーケティングについてまとめてみました。
実務上は役に立たないと思いますが、辞書の代わりに使えればいいかなと思います。
個人的に重要かなと思うのは、
- サービスの4つの特性
- サービス・デリバリー・システム/サービス・エンカウンター
- SIARVQUALの5つの次元
- 期待と知覚のギャップ
あたりでしょうか。
これまでの記事は、下記の通りです。ご興味があれば、ご覧ください。
ざっくり学ぶシリーズ