こんにちは。やまもとです。
マーケティング検定の公式問題集を読みながら、知らなかった点や忘れていた点を記録しています。最初の問題の解説から、すでに「そうか」と気づきを得られていて、「これはなかなか良い本なのでは?」と思い始めています。
今回は、マーケティング・コンセプトについて、整理しておきたいと思いました。そもそも、”マーケティング・コンセプト”という言葉を初めて聞いたのですが、これはビジネス・コンセプトの1つだそうです。
そこで、まずはビジネス・コンセプトについて、まとめてみたいと思います。
ビジネス・コンセプトの種類
ここでいう「コンセプト」は、”「全体を貫く概念」あるいは「全体的な志向」”を指しています。
これまで、5つのビジネス・コンセプトがあったそうで、マーケティングの立ち位置を明確にするためにも、区別できるようにした方が良いでしょう。
生産コンセプト
顧客は手に入りやすく手頃な製品を好むので、経営者は生産と流通の効率化に集中すべきだという考え方。
- 適合市場
- 未充足の市場
- 主な戦略
- 大量生産と規模の経済性によるコストダウン
- 問題点
- 充足市場だと、顧客満足を無視しがち。
製品コンセプト
顧客は最高の品質と性能を持つ製品を好むので、継続的に製品の改善を図ろうとする考え方。
- 適合市場
- 成長中の市場
- 主な戦略
- 既製品の改良による品質と機能による差別化
- 問題点
- 「穴を開ける」ことを無視して、より良いドリルを作りがち
販売コンセプト
顧客が自社製品の必要性に気づきにくいため、大規模な販売活動やプロモーション活動が重要だという考え方。
- 適合市場
- 非探索財市場、充足市場
- 主な戦略
- 売り込みとプロモーション
- 問題点
- 短期的売上を重視して、顧客関係を無視しがち
マーケティング・コンセプト
ターゲット市場のニーズを競合他社よりも的確につかみ、顧客満足を提供することが目標達成の鍵となるという考え方。
- 適合市場
- 情報が高速に行き交う市場
- 主な戦略
- 顧客のニーズを「感じ取って応じる」
ホリスティック・マーケティング・コンセプト
全体的で包括的なアプローチに立ってマーケティング活動を行うという考え方。(Kotler&Keller,2014)
- 適合市場
- 充足市場
- 主な戦略
- 4つのマーケティング活動を融和させる
日本社会とビジネス・コンセプト
これは、日本社会の発展を例にすると、理解しやすいかもしれません。
戦後、日本は戦争でモノが消費し尽くされ、あらゆるものが欠乏している状態でした。そのような未充足市場では、ものを手に入れることが何より優先されます。多くの人にものを行き渡らせるため、企業としては安く大量にものを生産し、流通させる必要があります。そのため、企業では、生産コンセプトが正しいと考えられたのでしょう。
高度成長期に入ると、資本主義の帰結として中流階級が増え、生活に必要なモノはだいたい行き渡りました。そうすると、すでに所有しているモノを買い換えるかどうかが購入のポイントになってきます。買い換えは、「機能が増えた」「性能が上がった」「長持ちするようになった」などの理由が必要です。すでに所有しているので「安くなった」だけでは購入しません。そのため、企業も「安く大量に作る」よりも「機能を増やす」「性能を上げる」「品質を上げる」といった考え方(=製品コンセプト)をするようになったのでしょう。各社が差別化を図っていった結果、日本には自動車会社が10社、電機会社が10社以上の大企業が存在する過当競争市場になっていきました。
バブル崩壊以降、消費者の財布が引き締まり、よほど大きな刷新でもない限り、買い替えも控えるようになりました。そもそも、1000機能が1001機能になっても、性能が1秒から0.8秒になっても、購入者からみると大差がありません。そこで必要になるのが、「購入者に違いを認識してもらうこと」または「購入者のニーズを知ること」になります。前者に注目した場合は、大規模な販売活動やプロモーションに力を入れようと考えるでしょう(販売コンセプト)。後者に注目した場合は、まさしくマーケティング・コンセプトになります。
ちなみに、「非探索財」とは、保険や墓石など、顧客が普段買おうと思わない商品のことだそうです。このような商材の場合は、まず顧客に認識してもらうため、販売コンセプトが実践されているそうです。
インターネットが急速に普及した現在、大量の情報が四方八方に飛び交うようになり、企業は顧客との関係だけに焦点を当てているわけにはいかなくなりました。例えば、社会的責任を負っていないとみなされれば商品の不買運動に繋がったり、社内で問題が起きれば社会的な説明責任を負わされたりといった具合です。そのため、これら全体のバランスをとった考え方(ホリスティック・マーケティング・コンセプト)が必要になってきています。
プロダクトアウトとマーケットイン
生産コンセプト・製品コンセプト・販売コンセプトは、企業の「内から外へ(プロダクトアウト)」の視点に立っています。企業組織内の生産現場や既存製品を起点として、自己満足や顧客獲得が目標とされやすいです。
逆に、マーケティング・コンセプトは、企業の「外から内へ(マーケットイン)」の視点に立っています。顧客ニーズを起点として、顧客満足の実現に目が向けられています。
製造業関連企業に所属しながらマーケティングを学んでしまうと、社内にプロダクトアウト志向が染み付いていることがよく見えてしまいます。マーケティングではマーケットイン思考を徹底するので、プロダクトアウト思考で発せられる社内情報に違和感ばかりを感じてまうようです。
プロダクトアウトとマーケットインの違いは、セオドア・レビット(ハーバード大教授)の引用がとても良かったので転記しておきたいと思います。
「販売は販売者のニーズに焦点を当てる。一方、マーケティングは購買者のニーズに焦点を当てる。販売では、製品をお金に換えるという販売者のニーズを充足することに気を取られている。一方、マーケティングでは製品はもとより、製品を製造し、供給し、最終的に消費されるまでのプロセスに関係するものすべてを駆使して、顧客のニーズを満たそうという考え方を重視している」
Levitt, 1960
そう。プロダクトアウト志向の企業だと、自社のニーズに焦点を当てているんですよね。これを読んで、違和感の正体が分かりました。
ホリスティック・マーケティング・コンセプトの4つの次元
コトラーが提唱したホリスティック・マーケティング・コンセプトでは、①関係性マーケティング(リレーションシップ・マーケティング)、②統合型マーケティング、③インターナル・マーケティング、④社会的責任マーケティング(ソサイエタル・マーケティング)の4つから成り立ちます。
- ステークホルダーとの長期的な関係性を目指すマーケティング。企業とその関係者との間に強力なネットワークを構築することを目指す。
- 別名、リレーションシップ・マーケティング。
- 顧客に向けた価値の提供を最大化させるためのマーケティング。
- 4Pを中心に全ての活動を連携させ、効果的なコミュニケーションを目指す。
インターナル・マーケティング
- 従業員など組織の内部人材に対して行うマーケティング。
- 顧客との関係性を維持するため、内部に顧客志向を共有することを目指す。
- 人々や企業のニーズを満たしつつも、同時に社会的・環境的責任を果たそうとするマーケティング。
- 自社の利益と生活者全般の満足と社会の幸福のバランスをとることを目指す。
- 別名、ソサイエタル・マーケティング。
これらは、管理部門またはバックオフィスが行ってきた内容をマーケティングとして捉え直し、整合性の取れた活動に全体最適化を図ることだと思います。
関係性マーケティングは、サプライチェーンに対して購買部や生産管理部が行っていたこと、株主に対して経営企画部が行ってきたことをマーケティングの視点で捉え直すイメージだと思います。統合型マーケティングは、マーケティング部門がもともと行っていた活動ですね。インターナル・マーケティングは、人事部の活動をマーケティング視点で捉え直すこと。社会的責任マーケティングは、CSR部門が行ってきた活動をマーケティングとして考え直すことだと考えられます。
マーケティングの範囲はどんどん広がっていますね。
しかし、その根底には「相手が何を欲しているのか」を起点に考えるという点が共通しています。顧客、利害関係者、従業員、社会全体と、「相手」が変わっているだけですね。
このブログは、下記のテキストを参考にしています。
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