こんにちは。やまもとです。
ここのところ、マーケティング検定のテキストを見ながら、マーケティングの各分野をざっくり学ぶ記事を書いています。以前、学習した内容を思い出したり、知らない言葉の意味を調べたりするときに使ってもらえれば嬉しいです。詳しい内容を知りたい方は、別の記事かウェブで検索していただいた方が時間を無駄にしないと思います。
今回は、BtoBマーケティングについてまとめてみます。BtoBマーケティングは、産業財マーケティングや生産財マーケティングとも呼ばれています。BtoBとは企業間取引のことですが、基本的に消費財メーカーと流通業者の間の取引は含んでいません。
BtoBマーケティングが重要視されている理由
- インターネットの普及により買い手の選択肢が増え、自社の潜在顧客へのアプローチが必要になっている
- 製品格差の縮小と顧客課題の高度化により、顧客の要望に忠実に答えるだけでは差別化できなくなってきている
生産財とは
生産財の定義
- 企業の生産活動や組織の業務遂行に使用される財
- 経済統計では「生産財」(生産活動に投入する材料)と「資本財」(機械や設備)を分けて考える
- BtoBマーケティングでは、「資本財」を含めて、「生産財」として扱う
生産財の分類
- 部品
- 原材料
- 機械・設備
- 業務用供給品
- サービス
部品
- 最終製品の機能を実現するために組み込まれるもの
- 例:ボルト、ナット、集積回路、スイッチ、モーター
- 主に、部品メーカーから購入する
原材料
- 加工されて部品や製品になるもの
- 例:鉄鋼、木材、プラスチック、石油
- 規格化されたサイズ・量・等級で取引されている
機械・設備
- 工場やオフィスで使われる機械や設備のこと
- 例:産業用ロボット、工作機械、計測機械、検査機器、エレベータ、スーパーコンピュータ、プラント
- 多くは受注生産で特定顧客にカスタマイズされる
- 固定資産に計上し、減価償却される
業務用供給品
- 組織の業務遂行のために使用される財のこと
- 例:潤滑油、燃料、机、椅子、事務用品、パソコン
- 多くは、カタログなどから標準仕様で購入される
サービス
- 人間が行う労働や施設の利用に対して対価を支払うもの
- 例:メンテナンス、アウトソーシング、オフィスリース
サプライヤーの数
- カスタマイズ品に近いほどサプライヤーの数は減少し、標準品に近いほどサプライヤーの数は増加する
生産財の購買
購買意思決定プロセス
- 問題認知
- 必要品目の特徴・数量の決定
- 必要品目の特徴・数量の記述
- サプライヤーの探索
- 見積取得
- 見積評価・サプライヤーの選定
- 発注手続きの選択
- 成果のフィードバック・評価
生産財の購買の特徴
- 少数、大規模、地理的集中
- 専門の購買担当者が購入する
- 購買意思決定の影響を与える人が多い
- 買い手と売り手が長期的関係になりやすい
- 需要の変動幅が大きくなりやすい
- 価格弾力性が小さい
少数、大規模、地理的集中
- 調達コストを削減するため、一度に大量購入をするため
- 販売コストを削減するため、買い手(組立メーカー)が地理的に集中するため
専門の購買担当者が購入する
- 組織が成熟すると、プロセスが整備され購買専門の担当者を置くようになるため
- 購買担当者は、組織の方針・制約・要件に基づいて、高度な判断が行われる
- 仕様書、注文書、承認手続きなどが定式化されている
購買意思決定に影響を与える人が多い
- 購買プロセス(特に承認手続き)が整備されているため
- 重要な購買には、購買委員会が結成されることもある
- 熟練した購買者に対応できる販売員が必要になる
買い手と売り手が長期的関係になりやすい
- 生産財の取引は、往々にして買い手の数が少ないため
- 規模の大きい買い手企業の影響力が高く、売り手は契約を継続したい意思が働く
- 契約を続けるため、個別ニーズに合わせて製品をカスタマイズすることもある
需要の変動幅が大きくなりやすい
- 最終消費者のわずかな需要変化でも、工場や設備の需要が大きく変動することもあるため
- 生産財の需要は、結局のところ最終消費者の影響を受ける
価格弾力性が小さい
- 生産者(買い手)が生産方式をすぐには変えられないため
- 部品の価格が下落したからといって、部品の注文が増えるわけではない
- 逆に、価格が高くなったとしても、需要が大幅に減少するわけでもない
BtoBマーケティング
BtoCマーケティングとの違い
BtoCマーケティング
- マーケティングのプロセスが、個別専門的に行われる
- 市場分析+市場からの情報収集
- 製品開発
- 市場販売
BtoBマーケティング
- マーケティングのプロセスのうち、情報収集は各ステップで行われる
- 顧客分析+顧客からの情報収集
- 製品開発+顧客からの情報収集
- 顧客販売+顧客からの情報収集
BtoBマーケティングの特徴
- 合目的性
- 継続性
- 相互依存性
- 組織性
合目的性
- 買い手企業の目的に沿ったマーケティングを行うこと
- 買い手企業は、目的に合った製品やサービスしか購入しないため
- 目的に合うか慎重に意思決定するために、多くの詳細な情報を集めようとする
- 調達ミスは、後工程に重大な影響を及ぼすため
継続性
- 継続的取引を前提としたマーケティングを行うこと
- 購買プロセスが複雑なため、買い手企業が長期的かつ継続的な取引を望むため
- 継続的取引のメリット
- 取引相手の知識が蓄積し、売り手は買い手のニーズに沿った製品を開発できる
- 取引相手との信頼関係が生まれ、交渉コストが削減される
- 売り手企業は、買い手企業との取引を前提に、思い切った投資を行うことができる
相互依存性
- 顧客と依存関係を高めるようにマーケティングを行うこと
- 相互依存関係が強くなるほど、継続性が高まるため
- 相互依存関係を高まる方法
- 売り手企業の製品開発・生産活動・サービス活動に、買い手企業の関与を許す
- 買い手企業の技術供与・開発投資援助・生産管理・品質管理を受け入れる
- 買い手企業に情報を提供する
組織性
- 知識・能力を持つ担当者と連携して組織的にマーケティングを行うこと
- 買い手企業の意思決定に、開発・生産・サービスなど各部門の専門家が関わるため
- 組織購買
- 組織的な意思決定により、購買が決定されること
BtoBマーケティングの情報収集
- 関係ベースの情報収集(カスタマイズ品の場合)
- 市場ベースの情報収集(標準品の場合)
市場ベースの情報収集
- 売り手
- 標準品の場合、顧客企業ニーズを1社ごとに把握できないため
- 調査方法:顧客との接触、顧客の観察
- 買い手
- 店頭での製品情報収集ができないため
- 調査方法:問い合わせ
- ニッチであっても産業のトップに位置することが重要
- 買い手は、業界トップの企業から問い合わせるため
関係ベースの情報収集
- 売り手
- カスタマイズ品は、顧客が限定されているため
- 調査方法:担当営業部門を通した情報収集(開発計画など)
- 買い手
- 開発購買などサプライヤーを限定しているため
- 調査方法:営業部門や技術交流を通した情報収集(コスト・開発技術など)
関係性強化のデメリット
基本的には、BtoBマーケティングにおいて関係性強化はメリットですが、デメリットも存在します。
- 利益最大化の機会損失
- 顧客企業への関係劣位
- 他社の技術革新への対応遅れ
利益最大化の機会損失
- サプライヤーは、コスト情報を伝えることになり、利益最大化の機会を失う
- 要因:価格引き下げ要求、厳しい品質・納期、高コストサービスの頻繁な要求
顧客企業への関係劣位
- 顧客企業への依存度が高すぎると、価格交渉や納期などの面で不利な立場になる
- 特定の顧客企業への販売依存度が高すぎると、共倒れリスクが高まる
- 特定の顧客企業への情報依存度が高すぎると、顧客企業の交渉力が高まる
他社の技術革新への対応遅れ
- 特定の顧客企業に特化した技術開発は、革新的技術への移行の足枷になる(イノベーションのジレンマ)
- 特定の顧客企業は従来技術を前提にした要求をするため、革新的技術への投資ができない
- 革新的技術が一般的になると顧客企業は、既存製品の生産を中止し、革新的技術へとスイッチする
- サプライヤーは従来技術しか保有しておらず、別の取引先に販売できないため、スイッチを防ぐため要求を飲まざるを得なくなる
新しい企業間取引のカタチ
サプライ・チェーン・マネジメントの目的の1つである調達リードタイム短縮のために、新しい取り組みが行われています。
コンカレント・エンジニアリング
- 製品開発において、設計・実験・評価といった段階を同時平行で進める取り組み
- 目的:開発のスピードアップ、手戻りの抑制、知恵の結集
開発購買
- サプライヤーとメーカーが共同で製品開発をすること
- サプライヤーを早期に選定する
- QCD(Quality, Cost, Delivery; 品質・コスト・納期)の要求は変わらず高い
- サプライヤーは、パートナーであるため最終消費者の需要もみておく必要性が高まる
ということで、BtoBマーケティングについてまとめてみました。
自分がBtoB企業に所属しているので、言われずとも知っていることが多かった印象です。
ざっくり学ぶ記事は他にもあるので、ご参考になれば幸いです。
ざっくり学ぶシリーズ