以前、「なぜ量子力学は理解しにくいのか?」という記事を書きました。
こういう記事も、意外と読んでくださる方がいるみたいなので、特殊相対性理論(特殊相対論)についても書いてみようかと思います。
特殊相対性理論は、物理学部で躓きやすい理論の1つかなと思います。
特殊相対論のイメージ
実は、もう少し先の物理学になると、特殊相対論は単なる時空回転対称性(時空間で回転しても長さは変わらないこと)という理解になります。やまもとのイメージもそんな感じです。
図1のように、時空回転は、時間軸方向も含んだ回転のことです。
図1.時空回転のイメージ、時間方向への回転も考える
時空回転は厳密にはもっと複雑ですが、「相対論化?はいはい、時空回転に対して対称になればいいのね」といった考え方をしています。
詳細は「世界線からたどる特殊相対性理論」の記事あたりを参考にしてください。
なぜ相対論は難しいと感じるのか?
相対論が厄介なのは、相対性(どんな慣性系でも同じ物理法則が成り立つこと)を求めた結果、私達の経験則や常識が当てはまらなくなることです。
例えば、アインシュタインの思考実験「あなたが光の速度で移動しているとき、追走している光はどう見えるか?」を考えてみましょう。
何となく、「電車の車窓から、線路に併設された道路を走る自動車を見たら・・・」など、自分の体験に基づいて考えてしまいませんか?
このように考えると、「同じ速度で走っているのだから、自動車は止まっているように見えるはず」と答えることでしょう。
しかし、正解は「どんな慣性系でも(あなたが光の速度で移動していたとしても)、光は光の速度で遠ざかっていく」です。
意味がわかりませんね。でも、これが「光速度不変の原理」の意味するところです。
ただし、光速度は、移動速度の上限値であって、必ずしも光の速度である必要はありません。
この移動速度の上限値を超えないために、自然は時間と空間を捻じ曲げます。
実は、上記の「自動車は止まって見える」と言う感覚は、「時間と空間が絶対に変わらず、速度はどこまでも速くなることができる」という前提に基づいています。
しかし、実際は「絶対に変わらない最大速度があり、上限を超えないために時間と空間は変化する」が真実でした。
この真実は、人類400万年の歴史の中でも、誰も体験したことがありません。そのため、あなたの経験則どころか、人類の経験則からも外れてしまっています。それでは、経験則や常識で判断できない真実を、経験則や常識で理解しようとしたらどうなるでしょう?
当然、「難しい」「分からない」と感じることでしょうね。
つまり、量子力学と同様に、相対性理論も人間の常識を超えた自然の現実を描写しており、私たちが普段の生活の中で持ってしまう常識を取り払わなければならないので、相対論は難しいと感じてしまうのです
どうすれば理解できるのか?
やまもとは、大学で初めて相対性理論の講義をとったとき、単位を落としました。再履修で単位は取れましたが、きちんと理解できた気がしたのは、大学院に進んで相対論的量子力学とかゲージ場の量子論とか勉強した時だった気がします。
その時点から振り返ってみると、次のような思考が必要だったように思います。
- 経験に基づくイメージでは考えない。
- 常識では判断しない。非常識もあり得ることを念頭におく。
- 数学を信じる。
これらは、量子力学を理解するのに必要な考え方と一緒ですね。
つまり、量子力学と同様に、思考回路を組み替える必要があるのだと思います。
まとめ
この記事では、やまもとの経験に基づいて、次のようなことを書きました。
- 特殊相対論とは、時空回転対称性のこと
- 日常生活では、人類の誰も経験したことがないで、経験則で考えても意味がない
- 理解するには、思考回路の組み替えが必要
昔、本屋に行くと「相対論は間違っている!」という書籍がたくさんありました。たぶん、常識的に考えてしまったんでしょうね。。。