こんにちは。やまもとです。
ここ2回ほど、簡単に復習するための「ざっくり学ぶ」記事を書いていますが、今回も同じように関係性マーケティングについてリスト化しようと思います。
今回も、マーケティング検定2級のテキストをベースにしています。
市場と関係性の変化
顧客関係性の変遷
- 1950年代、小規模商店は顧客と密接な関係を築き、顧客の嗜好を詳細に把握できていた(旧関係性マーケティング)
- 1970年代、大量生産化が進み、広告などで市場に喧伝する方が効率的になった(マス・マーケティング)
- 現在、情報技術の発展により、ターゲット顧客へ効果的で効率的なマーケティングができるようになった(関係性マーケティング)
顧客関係性が重視される理由
- 以下の3つの理由で、顧客関係性が「資産」と認識されるようになったから
- 市場の成熟化
- 顧客争奪戦が始まり、新規顧客の獲得よりも既存顧客の存在価値が大きくなったため
- アフターマーケットの拡大
- 修理・交換・点検などの市場にアプローチするために顧客関係が需要になったため
- 情報技術の発展
- CRM(Customer Relationship Management)システムにより、顧客をより詳細に分析できるようになったため
- 市場の成熟化
関係性マーケティング
関係性マーケティングの定義
- 顧客に継続的な利用を促し、ターゲッティング精度を上げ、効果と効率性を追求するマーケティング
- もともと特定顧客との継続的取引が多い企業間取引(関係的取引)の考え方と類似
消費者との関係性のメリット
- 継続的な購入
- 消費者が取引コスト(他社製品の探索)やリスク(未知の製品への乗り換え)を感じるため
- 販売機会の拡大
- 「クロスセリング」や「アップセリング」が可能となるため
- 顧客獲得コストの低減
- 広告費が削減でき、口コミによる顧客獲得ができるため
クロスセリング
- 自社の製品・サービスを購入する顧客に対して、関連する他の製品・サービスも販売すること
- 「顧客シェア」の拡大に寄与する
アップセリング
- 再購入する際に、よりグレードの高い製品・サービスへアップグレードすること
- 「顧客シェア」の拡大に寄与する
顧客シェア
- 1人の顧客の支出に占める自社製品・サービスへの支払金額の割合
- ロイヤルティを測る指標となる
企業間の関係性を強化する要因
- 取引コスト
- 目先の利益に対する駆け引き(機会主義的行動)を避けるため、関係性を強化しようとする
- 戦略的提携
- 企業間の資源・能力の補完(資源依存理論)のために提携すると関係性が強化される
- 関係特定的投資
- 特定企業との取引にしか利用できない情報システムや生産設備によって関係性が強化される
顧客関係マネジメント
顧客関係の識別と選択
識別と選択の観点
- ロイヤルカスタマーの識別
- 購買意思決定者の識別
- 顧客生涯価値(LTV:Life Time Value, CLV:Customer Lifetime Value)の高さ
ロイヤルカスタマー
- 特に重要な優良顧客のこと
購買意思決定者
- 購買意思決定を行う者のこと
- 消費者取引では、購入者と利用者と購買意思決定者が異なる場合があり、識別が必要になることがある
- 企業間取引では、選択者・利用者・支払者・責任者・承認者・購買意思決定者とさらに複雑になり、識別が難しくなる
顧客生涯価値(LTV、CLV)
- ある特定の顧客との取引が将来にわたって継続した場合に、企業にもたらされる売上や利益のこと
顧客関係の維持
維持の方法と注意点
- ロイヤルティ・プログラムの採用
- 顧客の不公平感の緩和
- スイッチング障壁の構築
ロイヤルティ・プログラム
- 顧客の購買の蓄積に対して報奨を与え、ロイヤルティを向上させ、継続的な取引を誘因する方法の1つ
- 例:マイル、ポイント・プログラム、次回ディスカウント(割引券)、キャッシュバックなど
- ロイヤルティ・プログラムの5条件
- 金銭的価値があること(お得感)
- ステイタス向上を感じられること
- 様々な引き換えの選択肢があること
- 多くの顧客の購買に関連があること
- 顧客にとって利便性が高いこと
- CRMシステムのデータとの連動が必須になる
顧客の不公平感の緩和
- ロイヤルティ・プログラムで特定の顧客の優遇の納得性を高めること
- 不公平感を緩和する方法
- 報奨機会の均等化
- 全ての顧客に報奨を得られる機会があることで平等感の向上を図る
- 購買に準拠した報奨
- 購買行動を理由にすることで納得感の向上を図る
- 報奨機会の均等化
スイッチング障壁
- スイッチング・コストを高め、顧客の離脱を防ぐこと
- 例:ポイント・プログラム、会員制プログラム、長期継続特典、アクセスしやすさ、使用経験、信頼関係
- 企業間競争では、早くスイッチング障壁を形成することが重要になる(後発だと崩しにくくなるため)
- ただし、過度なスイッチング障壁は、新規顧客に購買を思いとどまらせる要因にもなる(例:高すぎる年会費は払えない)
スイッチング・コスト
- 現在購入している製品・サービスから、他の製品・サービスに乗り換えるための手間やリスクのこと
カスタマー・エクイティ
カスタマー・エクイティの定義
- ある企業における全ての顧客の「顧客生涯価値」の合計のこと(物価上昇分は割り引いて算出する)
- 顧客の存在は、最も確実で信頼できる収益の源泉なので、物的資産やコア・コンピタンス、知的資産より重要
カスタマー・エクイティの要因
- バリュー・エクイティ
- ブランド・エクイティ
- リレーションシップ・エクイティ(リテンション・エクイティ)
バリュー・エクイティ
- 顧客が合理的判断によって製品・サービスを購入して、良かったと考える度合い
- バリュー・エクイティの向上要因
- 品質
- 価格
- 利便性
- 製品が差別化されていて、複雑な意思決定で決めた購入である場合、カスタマー・エクイティの向上に寄与する
- 生産財市場では、決定的要因になるケースが多い
ブランド・エクイティ
- ブランドに関する顧客の主観的な評価
- ブランド・エクイティの向上要因は、こちらを参照
- 製品間にあまり差がなく、感情的なインパクトの方が大きい場合に、カスタマー・エクイティの向上に寄与する
リレーションシップ・エクイティ
- 客観的・主観的なブランドの評価を超えて、顧客がブランドに固執する傾向のこと
- 製品よりも、企業と顧客の間に築かれた関係性に焦点
- リレーションシップ・エクイティの向上要因(一部)
- ロイヤルティ・プログラム
- 頻繁に購入する顧客に報奨を与えるプログラム(例:マイル)
- 特別待遇プログラム
- 優良な顧客により良いサービスの特権を与えるプログラム(例:ゴールドカード、プラチナカード)
- コミュニティ形成プログラム
- 製品・サービスの愛好者コミュニティを形成すること(例:ハーレー・ダビッドソン)
- 知識構築プログラム
- 企業と顧客の双方が、取引を通じて相手について学習できる仕組み
- ロイヤルティ・プログラム
ということで、関係性マーケティングに関わる話題をまとめてみました。
経済が成熟化した日本は、モノの消費からコトの消費へと需要が変わってきていますが、その環境の下で関係性マーケティングの重要性がますます高まるでしょうね。
個人的には、関係性マーケティングでは、下記が重要なポイントかなと思いました。
- 顧客シェアの向上
- 購買意思決定者の識別
- 顧客生涯価値の評価
- スイッチング障壁の早期形成
- カスタマー・エクイティとは
ざっくり学ぶ記事は、下記もあります。ご興味があればご覧ください。
ざっくり学ぶシリーズ