crop people adding sauce on pizza

消費行動はなぜ起きるのか?時間コストによる市場創造

こんにちは、やまもとです。

マーケティング検定の勉強を始める前に、試しに受験したのですが、消費者行動分析の問題は知らない知識が多い印象でした。

正答率は80%だったので、勘で答えてたまたま当たったみたいですが・・・。

勘で当たっても実力ではないので、消費者行動分析は少々詳しめに勉強しています。

今回は、前回3つの分析アプローチを検討した「消費行動」について、「消費行動がなぜ起きるのか?」に関する理論についてです。

今回のキーワードは「家計内生産(=家事)」ですが、最重要な概念は「時間コスト(=その時間に働かないと失う所得)」です。

一般には、「時間コスト」が低いと「家計内生産」を行う時間が増え、「時間コスト」が高いと「家計内生産」を行う時間が減少します。

イメージとしては、「家事に割く時間がない!」と感じる時が「時間コストが高い」場合と思えばいいのではないでしょうか。

消費様式に影響する要因

消費様式」とは、「家計内生産にするか、市場購入にするか」を選択のことです。

炊事・洗濯・育児など家事の項目について、家庭によってそれぞれどちらかを選んで毎日を繰り返すため、選択されたリストを「消費パターン」と言います。

食事で言えば、自分で料理する場合は「家計内生産」、スーパーやコンビニでお弁当を買ってくる場合は「市場購入」となります。

同様に、育児の場合も、自分で面倒を見る場合は「家計内生産」、託児所に預ける場合は「市場購入」となります。

市場購入する場合は、家事を家庭外のサービスに任せることになるので、「家事の外部化」とも言います。

この「消費様式」には、所得や時間コストはもちろんのこと、世帯人数や設備(洗濯機など)の有無、「どんなに忙しくても料理だけはする」といった価値観、市場購入する場合の価格などが影響を及ぼします。(下図)

図1:消費様式の要因

各要因がどのように消費様式に影響するのかは、次のようにまとめられます。

  • 家計内要因(経済的要因)
    1. 時間コスト
      • 時間コストが上昇すると「時間節約」のために、加工度の高い製品やサービスを購入しやすくなる
    2. 所得
      • 所得の増大は、労働によって時間コストを上昇させ、一方で予算の制約が緩みサービス消費を促すため、市場購入を促進する
  • 家計内要因(非経済的要因)
    1. 家計規模(世帯人数)
      • 世帯人数が多いほど、労働と家事を分担でき、家計内生産を選択しやすい
    2. 消費技術(設備ストック)
      • 家事に必要な知識やスキルは効率性を高め、冷蔵庫や電子レンジといった設備は市場購入を促進する
    3. 価値意識(ライフスタイル)
      • 家計規模や消費技術が同じでも、家庭独自のこだわりがあると消費様式が変わる
  • 市場要因
    1. 製品・サービスの相対価格
      • 所得に対して、相対的に価格が安ければ、市場購入を促進する

ただし、製品・サービスを部分的に購入し、家庭内で加工することもあります。

例えば、カレーライスを作るにも、スパイスから調合するのか、ルーを買ってくるのか、レトルト製品を買ってくるのか、コンビニでお弁当を買ってくるのか、外食するのかによって、家庭内での加工度合いが変わってきます。

このように、ニーズ(空腹)と欲求(カレーライスが食べたい)が同じでも、需要と消費には多様性があります。

だから、消費様式と消費パターンの変化の把握が重要になるんですね。

消費プロセスの変容と市場需要の創造

前述のように、新たな消費様式によって消費行動が変わる(消費プロセスが変わる)と、需要が変わります。言い換えると、市場需要が創造されます。

これを図示したものが、下図になります。

図2:消費プロセスの変容

この図は、環境要因の変化によって時間コストの増大が引き起こされると、消費プロセスの変容が促され、結果として市場需要が創造されることを示しています。

ここでは、「環境要因の変化」「消費プロセスの変容の促進」「市場需要の創造」について、簡単にまとめてみます。

「環境要因の変化」によって、時間コストが増大する場合は、例えば次のような場合です。

  • 時間コストを増大させる環境要因
    1. デモグラフィック要因
      • 晩婚・非婚・離婚・死別などによる単身世帯の増加や、女性の社会進出
    2. 経済的要因
      • 所得水準の上昇を目指す経済環境(低賃金による残業、副業の増加)
    3. ライフスタイル/社会的要因
      • 多忙なライフスタイル、家事への価値観、余暇活動の関心の増大
    4. 技術的要因
      • 情報通信技術、スマートフォン、リモートワーク

どれか一つが影響しているというよりも、これらが複合的に影響し、時間コストを増大させています。

次に、「消費プロセスの変容の促進」は、主に、時間コストの増大により時間節約型の消費プロセスへの変容を指しています。

  • 時間節約型の消費プロセスへの変容
    1. 家事活動の外部化
      • 炊事・洗濯・育児などを、外食・クリーニング・託児所などのサービスで代替すること
    2. 家事活動の売り手依存
      • 弁当や冷凍食品などを利用し、調理時間といった消費プロセスの一部を小売やメーカーに委ねること
    3. 家事活動の一部停止
      • 形態安定シャツでアイロン時間を省略するように、家事活動の一部を停止/回数削減すること
    4. 製品による家事活動の代替
      • 電子レンジ・全自動洗濯機・食器洗浄機など、製品で家事を代替すること

つまり、時間コストの増大によって、「時間節約ニーズ」が生まれるということですね。

最後に、「市場需要の創造」は、時間節約ニーズに対して求められる製品・サービスの領域を整理したものです。

  • 時間節約ニーズで創造される市場需要
    1. 新たな代行サービス
      • 家事の外部化や時短のためのサービス(外食など)や、時短のための代行サービス(買物、手続き代行など)
    2. 時間節約型の機器
      • 家事を省力化する機器、処理時間を短縮化する機器、自動化・予約機能・遠隔操作で時間節約する機器
    3. 時間節約型の小売
      • コンビニ、ネット通販、宅配サービスなど
    4. 半加工品・使い捨て製品
      • 調理済み食品や、廃棄処分の手間を省略できる使い捨て商品など
    5. 省時間型の余暇活動
      • 短期間(日帰り)の旅行、都心のジムでのアスレチック、VRによるレジャー擬似体験など

これらに思い当たる製品やサービスがたくさんありますね。

最後に

消費者市場(BtoC)の場合は、家計内生産における「時間コスト」に注目すると、「多くの製品サービスがなぜ利用されているのか」を説明することができました。

さまざまな環境要因も、結局、「時間コストを増大させるか」という観点で考えればよいのは、シンプルで分かりやすいですね。

また、生理的欲求による「根源的なニーズ(空腹など)」が変わらなくても、その消費プロセスの変容に注目することで、もう少し上位の「時間節約ニーズ」から市場需要が創造されることが分かりました。

この考え方は、ビジネス市場(BtoB)でも応用できそうな気がします。

今回はここで終わりますが、次回もまだ消費者行動分析に関する記事が続く予定です。

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