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組織行動論②|アージリスの組織論

クリス・アージリス教授(エール大学経営学部)は、1957年に「パーソナリティと組織」、1962年に「対人的能力と組織の有効性」、1964年に「個人と組織の統合」という著書によって、人間関係論の課題を克服するための行動科学的経営学を開拓した一人です。

アージリスの問題意識は人間関係論と同一ですが、その研究全体は人間関係論を批判しています。アージリスの批判は、人間関係論が「作業の外にある活動(非公式組織)を作業者にとって心地よいものにしてやる」ことで自主的な協働関係が回復できるとしている点です。人間関係論が「公式組織は所与であり変更できない」と無意識の前提を持つのに対し、アージリスは「(公式)組織と個人の統合」を図ることで自主的協働関係を改善できると考えていました。

ということで、今回はレビュー論文(田杉1966、黒田1982)を読みながらアージリスの組織論を勉強してみたいと思います。

公式組織の問題

前述の通り、アージリスと人間関係論の問題意識は共通で、その主張は次のようなものでした。(黒田,1982)

  • 企業は、人間の社会的関係を含む一つの「社会システム」である
  • 従来の管理技法は、「費用と能率の論理」と「技術的技能」を重視し、人間の感情や心理を無視してきた
  • 人間の協働を維持・発展させるには、感情によって動機付けられる非論理的な行動も必要である

最後の項目は、メイヨーが「社会的技能」の必要性を、レスリスバーガーが「感情の論理」の必要性を説いたのに対し、アージリスは「対人的能力」の必要性に説いています。しかし、これはほぼ同じ内容を指していると考えられます。

理論体系の構築

アージリスの最初の独自性は、理論の基礎をパーソナリティに求めた点で、個人と公的組織の不一致から非公式組織が誕生し、それをさらに統制しようとすることで、組織が機能不全に陥っていくメカニズムを説いた点です。

ホーソン実験に由来する人間関係論は、おびただしい実験的研究を積み重ねましたが、実験的研究の性質上、部分的な問題や仮説の研究が多く、より大きな理論体系を構成する努力はあまり行われてきませんでした。(田杉1966)

図1.アージリスの組織の機能不全メカニズム。田杉(1966)を参考に筆者作成。

アージリスは、理論的基礎を個人のパーソナリティ(自己実現人モデル)に求めました。個人は自己実現に向けて行動する一方で、公式組織は組織目的に沿った行動を促すために専門組織や命令系統を確立しようとします。個人は公的組織に対抗するために非公式集団を作り、その中で自己実現を試みますが、公式組織は非公式組織の反抗を抑えようと統制を強化します。そして、個人は自己実現ができずに欲求不満に陥ります(田杉1966)。アージリスは、当時の企業で起きていたことを、このように説明しました。

機能不全のメカニズム

田杉(1966)が言及するこのメカニズムの詳細は次のように整理できます。

図2.アージリスの組織の機能不全のメカニズム。田杉(1966)を参考に筆者作成。

パーソナリティは、個人の意識的・無意識的な欲求の総合された全体で、個人が組み込まれた多くの社会的集団の文化からの影響を受けるものです(田杉1966)。そして、個人は社会集団との接触を通じて成長しますが、マズローによれば成長(欲求)とは自己実現(欲求)そのものです。一方で、人は不安や対立に遭遇し、パーソナリティが脅かされると、種々の防衛機構(攻撃、自責、抑圧、転嫁など)が発動します(田杉1966)。

公式組織とは、特的の目的を持ち、合理的な計画をもって実現せんとする集団のことです。アージリスは、公式組織は4つの特性、①作業の専門化(分業化)、②組織の階層化(ピラミッド型組織)、③命令の一貫性(合理性重視)、④管理統制の限界(一人が管理できる人数に限界があること)、があるとしています。これらは、①成長機会の喪失、②従属的態度の助長、③自己目標の設定不能、④組織の官僚化、といった自己実現を妨げる作用があり、賃金はこれらに対する代償とも見られます。ただし、実際の組織では、これらの欠陥を防ぐために、権限移譲、分権化、スタッフ組織などのダイナミックな経営管理が併用されています。(田杉1966)

公式組織の組織原則に代表される組織の要求は、個人の欲求を抑圧し、成長を妨げるため、個人は様々な適応行動をとるようになります。まず、個人の典型的な行動としては、従業員の離職行動、上層部の昇進要求(政治行動)、熱意喪失による無関心化などが挙げられます。あるいは、集団で抵抗するために非公式組織が組成され、非公式行動基準による排除(組織ではなく自分達のやり方に合わせない人を疎外する)、組織的怠業(ストライキ)による生産抑制、物質的報酬重視の姿勢(お金さえ貰えればどうでもいいという態度)の助長など促進されます。(田杉1966)

このような、生産能率を低く抑える行動は、組織の目的からすると望ましくありません。そのため、公式組織はこれらを是正する対策を取らざるを得ません。典型的には、組織目的の浸透管理統制の強化人事考課の厳正化などの対策を強圧的リーダーシップによって強制されることになります(田杉1966)。そして、このような対策は、組織原則をより厳密化・厳正化することになり、組織原則の問題点を更に助長することになります。

このメカニズムから分かるのは、公式組織が組織原則を適用すると、個人がそれに適応・対抗し、抵抗を抑制しようと組織原則をより強化するという「組織の自縛」強化ループです。しかもこのループは、個人のパーソナリティと無関係に進行してしまうため、パーソナリティを無視した組織を作り上げることになります。典型的には、上位下達の組織で、「会社の言うことだから仕方ない」と従業員の中に諦めが広まっている組織が考えられます。

現代組織との比較

アージリスの考える公式組織は、あまりにも機械的であり、負の作用しか見ていない点には注意が必要です。現代の実際の組織では、多くの場合、ここまで機械的では無いでしょうし、組織原則も増えているのでは無いでしょうか?

しかしながら、「組織の自縛」は現代組織でも起こっているように思います。

例えば、会社があるルールを運用していたら、社員の一部がルールをハックして(抜け道を見つけて)、自分が有利になるようにイカサマをしていたとしましょう。会社としては、社員を公平に扱うために、見つかったイカサマの禁止を社員に強制し、それを付け加えてルールをより厳密化・厳正化することでしょう。

これが進行すると、究極的には社員が自ら考えて行動することを禁止する社員規則(従属的態度を奨励する規則)が出来上がります。このような組織には、一定の生産能率はあるでしょうが、生産能率が発展する見込みはありません。静かに衰退していくのを見ているしかなくなります。

この「組織の自縛」の恐ろしいところは、全てが合理的判断によって行われているところです。公式組織は組織目的に対して合理的な組織原則を適用しようとしますし、個人は個人目的に対して合理的な適応行動を取ろうとします。そして、公式組織は合理的に評価して、適応行動を抑制しようとしています。つまり、組織目的と個人目的が不一致なまま合理的判断を繰り返すと「組織の自縛」に陥ります

このことから、「組織の自縛」を抜け出すには、どこかで不合理的判断を取り入れるか、あるいは組織目的と個人目的を一致させておく必要があります。アージリスは後に「個人と組織の統合」が必要という説きますが、これは後者によって「組織の自縛」を抜け出そうとしていると見ることができます。

個人と組織の統合

心理的エネルギーのメカニズム

アージリスは、第二著で対人能力(interpersonal competence)、第三著で心理的エネルギー(psychological energy)という概念を導入し、組織のあるべき姿を導出しようとしています。

アージリスは、組織の管理能力を「知的・理性的・技術的能力と対人的な能力」(黒田1982)の二つの能力から構成されると考えており、後者を対人能力と呼びました。対人能力とは、「組織の人間関係において、互いに自己実現とパーソナリティの成長をしうるような関係、つまり本性的関係(authetic relation)を作り出す能力」(黒田1982)のことです。

アージリスによれば、心理的エネルギーとは「生理的エネルギーだけでは説明できない人間行動を理解する概念」で、「勤労意欲や協力態度のほか創造性などの広い範囲を指す」(田杉1966)や「やる気や意欲といったようなもの」(黒田1982)と解釈されています。そして、やる気が高い従業員が多くなれば、組織の効率は高くなると仮定します。すなわち、「心理的エネルギーの向上は、組織効率を向上する」ことを前提としています。

これらを用いて、機能不全を起こした組織のメカニズム、下図のように整理しました。

図3.機能不全組織の心理的エネルギーによるメカニズム。田杉(1966)と黒田(1982)より著者作成。

まず、ピラミッド的価値観とは、次のような信念のことです(黒田1982)。

  1. 重要な人間関係は、「組織目標を達成すること」「仕事をやらせること」に結びついている。
  2. 人間関係の効率は、行動が合理的・論理的コミュニケーションが活発であれば高まるが、情緒面が増大するにつれ減少する。
  3. 人間関係は、合理的行動と指示・強制・統制・報酬・懲罰があると効率が上がる。

このような信念が支配的になってくると、「組織の中での相互作用の合理性や知的側面を重視するようになり、対人的・感情的側面特に仕事を遂行することに関係なく見える側面を抑制するようになる」(黒田1982)ため、本性的関係が減少していきます。

そして、本性的関係が減ると、「組織の規範が各人に彼らの感情を隠さざるを得なくしがち」になり、「各人の対人関係や感情を処理する能力を発展させることが極めて困難」になるため、このような組織では対人能力が減少していくことになります(黒田1982)。簡単にいうと、建前重視の文化になり、本音が言えなくなるということでしょうか。

このように対人能力が減少すると、①他者の感情が分からなくなり他者の評価を正しく行えなくなる、②自分の対人能力低下に気づかずに「自分は正しく評価している」と考えがち、です。すると、評価された側は、「自分は〜がしたいのに、なんで周囲は分かってくれないんだ」と考え、周囲への不信が増えたり、自我の不安定化が起こることでしょう。

このような不信や不安があるとき、従業員には2つの道があります。一つは、組織と対立し、自らの要求を組織に認めさせることです。しかし、従業員は「結局、解雇とか懲戒とかを受けることになる」(黒田1982)ため、個人による対立はほとんど起こりません。実際には、労働組合が組成され、組織対組織の対立に持ち込むようになりました。アージリスの観点では、労働組合は非公式組織に分類されています。

もう一つの道は、自分を押し殺して組織に従う道です。懲罰を受けないように「大事をとろう」「安全にやろう」と考え、組織状況をそのまま容認することで自己の防御を行います(黒田1982)。そして、従業員は、罰せられない程度に手を抜いたり(欠勤・怠業・スローダウン・生産制限)、物質的・金銭的報酬のみを重視した利己的態度や組織への無関心になったり、責任転嫁のために他者を攻撃したり、転職したり、といった順応を見せるようになります(田杉1966)。

このような順応は自己実現欲求とは遠くかけ離れているため、順応をし続けると心理的成功は感じにくくなっていきます。したがって、順応を続けた従業員の心理的エネルギーは次第に減少していきます。

一方、組織では、順応した従業員が大勢を占めると組織全体の順応(大勢順応・条件的受容、黒田1982)や、「言われたことだけはやります」といった表面的打ち込み(external commitment)の様子が見られるようになります。そして、順応した従業員同士では表面的な関係に終始することになり、本性的関係の減少にも拍車がかかります。

こうなると、組織の各部門が自己利益のみを志向し、組織的防衛が行われ、意思決定が効率的ではなくなっていき、結果として組織効率が下がります(黒田1982)。また、このような組織では、従業員の自己実現よりも組織の利益が優先されるため、たとえ外部から成功に見えたとしても、従業員は心理的成功を感じられなくなっていきます。

そして、組織効率が下がると、組織効率を高めようとして管理統制を強化し、ピラミッド型価値観をより強固なものにしていきます。

こうして、対人能力と心理的エネルギーの概念を追加することで、組織の機能不全が強化されていくメカニズムの詳細が見えました。

心理的エネルギーの最大化

上記のメカニズムでは、心理的な成功に常に負の要因が影響を与えているため、心理的エネルギーは減少していく一方です。組織効率を高めるために、まずは心理的エネルギーを高めるメカニズムを見ていきます。

心理的エネルギーが向上するプロセスについて、田杉(1966)は次のように述べています。

欲求や価値体系や能力の総合たるパーソナリティが 自己の能力(それには認知力と対人的能力とをふくむ)と環境からの影響を正 しく評価し,また他人からのゆがんだフィードハッグや防衛を少なくすることである。そうすれば自己責任自制使命感(目標達成をやり遂げようとする) をもち,能力活用ができる状態に達する。そのとき自意識と自信(ないし自尊心)が得られるとする。そのような状態が心理的成功,あるいは健全な精神状態 (proper state of mind)とよばれるものであるが,人々は自己の目標と手段を決定し,責任感と使命感とをもって,かつ自己の能力を活用して目標達成に努力するようになるというのである。自信ないし自尊心は潜在的エネルギーであるが,それが心理的成功を経験すれば,そのエネルギーは顕在化する。

田杉競. (1966). アージリスの組織理論 (2). 經濟論叢97(3), 289-304.

これを、図にしたものが、下の図になります。

図4.心理的エネルギーを最大化するプロセス。田杉(1966)と黒田(1982)より著者作成。

上図によれば、心理的エネルギーを高めるには、自己能力と環境の自己評価の正しさと、他者からのフィードバックの正しさが必要になります。これらが正しい評価であれば、従業員は「やるべきだ(自己責任と使命感)」→「私ならできる(能力活用可能)」→「私に任せて(自信や自尊心)」と潜在的な心理的エネルギーを蓄積していきます。これに心理的な成功体験が加わると、心理的エネルギーが顕在化します。

しかしながら、ピラミッド的価値観に支配された組織では、対人能力の減少を通して、自己評価や他者評価を歪ませてしまいます。また、個人としては上手くいったと感じたとしても、「余計なことをするな」「個人の感情なんてどうでもいい」といった組織防衛的文化があると、成功も成功とは感じられなくなってしまいます。

したがって、心理的エネルギーを高め、組織効率を高めるには、組織の価値観(構成員が持つ組織観)を変えなければなりません

組織観の変革

これを受けて、アージリスは「組織効率=組織目的の達成効率」と考えるのをやめ、「組織効率=組織中核活動全部の達成効率」ととらえ、次のように提唱しています。

「組織効率に関するわれわれの見解は、たんなる組織目的達成だけでなく、三つの中核活動全てを強調し、人間的側面や非人間的側面にも焦点を合わせるという点で幅広いものなのである」

黒田兼一. (1982). アージリスの管理論について (1). 桃山学院大学経済経営論集24(1), 79-111.

これは、三つの中核活動のいずれかに偏った組織観ではなく、バランスよく焦点を当てた組織観へ変革することを提唱していると考えることができます。そして、アージリスは、組織中核活動の程度を表す6次元組織モデル「ミックスモデル(混合モデル)」を提案し、その6次元を高めることで、組織効率が高い状態を目指すこと提案しました。これらを図にすると以下のようになります。

図5.心理的エネルギーを最大化する組織のあり方。田杉(1966)と黒田(1982)より著者作成。

この図のように、個人と組織の間に好循環が生まれた状態が、「個人と組織の統合」された状態と言えるのでしょう。

組織中核活動

アージリスは、「オープン・システムたる組織が外部環境からの影響をうけながら、それ自身はサブ・システムたる部分の相互関連ないし相互作用によって維持されているという、システム論的モデルによって組織を理解しよう」(田杉1966)としました。そのような組織の存続に不可欠な性質として、

  1. 組織全体は複数の部分から構成される
  2. 部分の相互関連を通じて自己を維持する
  3. 特定の目的を達成しようとする
  4. 各部分の相互関連を維持する
  5. 外部の環境に適応する

を考え、この定義に内包された活動として、次の3つの活動を組織の中核活動と定義しました(田杉1966)。

  • 組織目的の達成
  • 内部体系の維持(内部システムの維持)
  • 外部環境への適応

前述のピラミッド型の組織観は、組織目的の達成を重視するあまり、内部体系の維持を疎かにして従業員の順応を引き起こしてしまい、結果として組織効率を落としてしまっていました。一方、人間関係論は、内部体系の維持を重視するあまり、組織目的の達成を軽視したため、批判されていました。また、外部環境の変化に適応できなければ、事業は縮小していき、結果として組織目的の達成はできません。

したがって、3つの中核活動のうちどれか1つを達成すれば良いのではなく、3つを同時に達成しなければ組織効率の向上にはつながりません。すなわち、組織は「組織中核活動の同時達成こそ目指すべき」という価値観を持たなければならないのです。

ミックスモデル

アージリスの仮説では、組織効率を高めるためには個人の心理的エネルギーを高め、そのためには個人が心理的成功を経験するように組織を設計する必要があります(田杉1966)。アージリスは、組織設計の条件として、

  1. 心理的成功を感じられるように、人の能力に挑戦するような困難な目標を達成する機会をつくる
  2. 可能な限り、心理的成功と自尊心の機会を増大するように改変する
  3. 改変によって、組織中核活動の消費エネルギーが下がる限り、改変を続ける

を挙げています。また、諦めや無関心に陥った従業員が第一条件の「困難な目標を達成する」のは容易ではないため、従業員個人も変わる必要があるとしています。

しかしながら、アージリスは個人や組織がどの程度変われば良いのかは示しておらず、代わりに組織の社会的有機体としての特性をあげて、両極端な場合のみを6次元の「ミックスモデル」として示しています。

表1.アージリスのミックスモデルの定義(黒田1982)。次元の名称は著者による命名。

ミックスモデルの各次元は、次のように説明されています。

  1. 支配の分散化
    • 誰が中核活動を支配しているか(黒田1982)
    • 中核活動が、中央集権的(遠い)なのか、権力分散的(近い)なのか
  2. 全体最適意識
    • 各部分が全体のことを知っているかどうか(黒田1982)
    • 部門主義(セクショナリズム)に陥っているか、いないか
  3. 全体目的意識
    • 下位目標はより大きな全体目標と関連づけられているか(黒田1982)
    • 高い視座で仕事を考えられているか
  4. 組織内部の柔軟性
    • 「組織の最も基本的な特色の一つは、必要に応じて任意の内部活動を修正する行為能力である」(黒田1982)
    • 前例主義などで組織が硬直的か、それとも柔軟に自己変革できるか
  5. 外部環境への適応力
    • 組織が外部環境へ適応できないか、適応できるか
  6. 組織の長期的視野
    • 中核活動が、場当たり的か、将来を見越した活動か

ピラミッド型の組織観は、本質的特性から極端に遠い場合に相当します。つまり、ピラミッド型の組織観の下では、経営管理による強圧的統制があり(支配の集中化)、大勢順応によって部門主義が進み(部分最適意識)、組織防衛のために行動し(部分目的意識)、強力な価値観の支配によって変われず(硬直的組織)、短期的目標の達成に終始(短期的視野)してしまいます。

したがって、アージリスの仮説にしたがって組織効率を高めるには、組織がミックスモデル上の本質的特性に近づくことが必要です。近づけば近づくほど、組織の中核活動を全て達成した状態に近づいていきます。

図6.ミックスモデルの得点例。高得点の青線が本質的特性に近く、組織効率が良いことを表す。

まとめ

アージリスの組織論は、教科書などでもあまり載っていないので、昔の文献を調べて、理解し、まとめるのに時間がかかってしまいました。そもそも、理論が難解で、資料を読んでもなかなか理解できなかったので、この理解しにくさが教科書に載っていない理由なのかも知れません。

しかし、なんとか理解した範囲では、アージリスの理論は、ちょうど人間関係論と組織行動論のつなぎの部分になっているように思います。アージリスの理論は、「人間関係論に出てきた非公式組織がなぜ形成されるのか?」「どうして科学的管理法のように効率を追求すると効率を落としてしまうのか?」など、それまでの理論の問題や批判に応えようとし、組織行動論の中心テーマの1つである人間のモチベーションにその理由を求めています。

経営組織論④|人間関係論の成り立ち

また、「3つの組織中核活動を同時達成する」という価値観は、現代の経営でも通用するように思いました。

ただし、アージリスの理論は批判も多く、時代を経て理論が二転三転していること、個人と組織の相互作用を心理的エネルギーのみを仮定していることなど、問題点も指摘されています。これらの問題は、その他の組織行動論で改善されていくのでしょう・・・多分。

参考文献

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