創造性の心理学15|マンフォードの情報処理モデル

こんにちは、やまもとです。

創造性について、Runco教授がまとめた書籍「Creativity」を学習しつつ内容をまとめています。

紹介された4つ目のコンポーネント理論は、Mumfordのプロセス分析モデル(Mumford,et al. 1991)でした。Mumfordらは、当時までの創造性研究に共通のプロセスを見出し、それらを情報処理としてモデル化しました。

コア・プロセス

Momfordらは、問題解決を「組織化された処理群」と定義しました。問題解決が複雑になると、より多くの処理が必要になります。1つ1つの処理は、ある情報群を入力として、別の情報群を出力するもので、コア・プロセスと呼びます。ただし、処理の効率や品質には個人差があります。(Sternberg, 1986, 1988)

情報処理のコア・プロセス

結合と再編成

処理を行う際には、知識を使用します。知識は、構造化された情報として記憶に保管されています。1つの情報に対する処理では、入力された情報に対して記憶の中から知識構造が検索され、妥当な知識構造が見つかると、情報をその知識構造に格納(連結)し、記憶を更新します。そして、既存の、あるいは更新された複数の知識構造を結合・再編することで、新たな理解を生み出し、それを情報として出力します。(Koestler, 1964; Kuhn, 1970; Mumford, Gustafson, 1988; Sobel, Rothenberg, 1980; Rothenberg, 1986, 1988; Rothenberg, Sobel, 1980)

これに従うと、情報処理のコア・プロセスは、知識構造の検索・格納・結合といったより詳細なコア・プロセスで構成されていることになります。

知識構造の結合と再編成、新しい理解の情報化

知識構造の種類

知識構造には、次のような種類があります。

  • カテゴリー構造(Barsalou, 1982, 1983)
    • 手続き的カテゴリー(順序構造)
    • 宣言的カテゴリー(ツリー構造)
  • スキーマ
  • 連想ネットワーク(Langley, Jones, 1988)

これは、マーケティングで出てきた構造と同じですね。

再掲:マーケティングにおける主な知識構造
(参照記事:購買行動が多様になる理由

情報処理モデル

Mumfordら(1991)は、創造性の先行研究を参考にして、下図のようなプロセス分析モデルを提唱しました。このモデルは、コア・プロセスの連鎖によって構成されています。すなわち、各ステップがそれぞれ処理の異なるコア・プロセスになります。

Mumfordのプロセス分析モデル(情報処理モデル)

このモデルは、以前記事にまとめた創造性のステージ論(プロセス論)とよく似ています。これは、Mumfordら(1991)が同じような文献を参照しているため、当然の結果と言えます。違いとしては、①実装とモニタリングがあること、②前のステップに戻ることがあること、③モニタリングの結果が問題構築にフィードバックされること、の3つが挙げられます。試行錯誤によって、単純にプロセスを辿るだけではない点が、ステージ論と異なると言えるでしょう。

このモデルでは、基本的に、前のプロセスが完了すると後続のプロセスが観察されるとされています。ただし、各プロセスの重要度やかける時間は、問題によって濃淡があります。例えば、問題が明確に定義されている場合、問題構築にはほとんど時間がかかりませんが、問題自体が曖昧な場合は問題構築により多くの時間がかかります。

以降では、各プロセスの説明をしていきます。

問題構築

1991年当時、問題構築がどのように行われるか特定できていませんが、「一時的なカテゴリーを形成する」という仮説(Barsalou, 1983; Gick and Holyoak, 1980, 1983)は妥当と考えられていました。

  • 入力情報:目標、制約、結果、問題解決ステップ、必須宣言情報、文脈的刺激など
  • 情報処理:アドホックなカテゴリーの形成、問題スキーマのスクリーニング
  • 出力情報:新しい問題スキーマ(暫定)

なお、問題構築の効率性の違いが創造的問題解決に著しい影響を与えることが示されています(Getzels & Csikszentmihalyi, 1975; Runco & Okuda, 1988; Smilansky, 1984) 。つまり、問題構築が速いほど、創造的な問題解決がされやすいです。

ただし、問題構築では、次のような多くの個人的要因が影響するため、初期理解はどうしても偏った理解になってしまいます。

  • 個人の知識・技能・能力による、想起する問題スキーマの選別
  • 個人の価値観が、目標設定に影響する(Howe, 1982)
  • 個人が時間と注意力をどれだけかけられるか
  • 個人が受容できるリスクの大きさ
  • 個人の中で活性化している他のカテゴリー

情報エンコード(符号化)

情報の符号化は、問題構築で得られた暫定的問題スキーマを、長期記憶から適切な情報を検索したり、新たに必要な情報を探すための検索キーに変換するコア・プロセスです。(Amabile, 1983)

  • 入力情報:問題スキーマ(暫定)、連想ネットワーク、刺激の手がかり
  • 情報処理:長期記憶から情報取得、知識の精緻化
  • 出力情報:手続き的知識構造、宣言的知識構造

この処理が必要になるのは、問題構築で得られた問題の初期理解が、問題解決に十分な情報を備えていることは稀だからです。特に、新しい情報や知識構造が必要な条件下では、このプロセスは長期化します。Sternberg(1986)によれば、効果的なエンコーディングは問題解決と創造性の双方に影響があります。

カテゴリー探索

カテゴリー探索は、符号化された知識構造を理解するために、関連するスキーマや知識体系、あるいは適用ルールを特定するコア・プロセスです。このプロセスで、連想思考や類推思考などの思考法が使用され、問題を理解するための問題空間(枠組み)を特定します。

  • 入力情報:手続き的知識構造、宣言的知識構造
  • 情報処理:連想思考や類推思考などをガイドにした関連カテゴリー検索
  • 出力情報:情報理解のための問題空間(関連スキーマ、知識体系、適用ルール)

この探索プロセスの幅と効率が、創造性に大きく影響を与えます(Alissa, 1972; Gough, 1976; Harrington 1981; Kogan, Connor, Gross, & Fava, 1980; Mednick & Mednick, 1967; Poze, 1983; Runco, 1986 )。

情報のエンコードとカテゴリー探索は、実際には同時並行で行われ、相互に影響を及ぼします。カテゴリー検索の結果、あるカテゴリーが活性化すると、手がかりとして情報エンコードプロセスにインプットされます。そして、新たな知識構造が得られると、関連するカテゴリー検索がさらに行われ、循環することになります。

最適カテゴリーの特定

情報エンコードとカテゴリー探索の連鎖過程は、結果として問題空間に含まれる多くのカテゴリー構造を見つけることになります(Langley, Simon, Bradshaw, and Zytkow, 1987)。しかし、私たちは使用するカテゴリー構造を評価し、何らかの基準・制約に基づいて取捨選択し、最適なカテゴリーを特定しています。

  • 入力情報:問題空間中のカテゴリー構造群
  • 情報処理:系統的な評価
  • 出力情報:最適なカテゴリー構造

評価には、様々な要因が影響を与えることが予想されます。

  • 専門知識や知能 →プロセスの運用効率
  • 認知的複雑性、柔軟性、開放せい →評価基準
  • 業績プレッシャー、ストレス →プロセスの運用
  • 社会的プレッシャー →カテゴリー適合性

カテゴリーの結合・再編成

構築された問題のカテゴリーの特定は問題解決の視点を認識しますが、それだけで問題解決ができるわけではありません。問題解決には、問題解決に関連するカテゴリーを組み合わせたり、再編成することで、問題解決策を創造することが必要です。そのため、このプロセスがもっとも創造的思考と関連があります(Mumford and Gustafson, 1988; Owens, 1969; Rothenberg, 1986)。

  • 入力情報:特定されたカテゴリー、関連するカテゴリー
  • 情報処理:関連するカテゴリーの組み合わせ・再編成(創造的思考)
  • 出力情報:新しい問題解決策

このプロセスでは、創造性に関する下記のような多くの要素が関連すると考えられます。

  • 類推モデルや発散的思考スキル(Holyoak, 1984; Mumford & Gustafson, 1988; Owens, 1969; Runco & Albert, 1985)
  • 推論能力と協調的能動的プロセス(Krietler & Krietler, 1987)
  • 自尊心、組織性、独立性、柔軟性、開放性なのパーソナリティ(Feldhusen & Hobson, 1972; Houtz, Jmabor, Cifone & Lewis, 1989; McCrae, 1987)
  • コミュニケーション、ピアサポート、異論を奨励する規範などの風土的影響(Abbey & Dickson, 1983; Knapp, 1963)

アイデア評価

問題解決策が創造できたとしても、その解決策の有用性や実現可能性を評価しなければなりません。これは、いくら優れたアイデアであっても、資源不足や競合の存在など実行不可能であっては意味がないからです。

  • 入力情報:問題解決策
  • 情報処理:潜在的な有用性の評価
  • 出力情報:有用な問題解決策

この評価ステップが「実世界」の創造性の重要な決定要因になる根拠が示唆されていますが(Runco & Albert, 1985; Harrington, Block & Block, 1983)、アイデアの評価は、風土的・動機的・環境的偶発性、意思決定バイアス、意思決定を条件づける変数、対内的・対外的な評価の場所によって影響を受けます(Einhorn & McHogarth, 1981; Hogarth, 1980; Kahneman, 1972; Runco & Vega, 1990)。また、リスク選好性、好奇心、自尊心などの新しいものを追求する個人的意欲も、このプロセスに影響を与えるでしょう。

実装

有用だと評価された解決策も、アイデアだけでは実際に実行することはできません。アイデアを実世界の問題可決で実行するには、知識・スキル・能力・熱意・説得力などより多くの要素が必要になります(Barron & Harrington, 1981; Simonton, 1988)。

さらに、この実装プロセスが、偶然の環境変化を引き起こすことが説明されています(Carroll & Gillen, 1987; Hayes-Roth & Hayes-Roth, 1979)。実装プロセスでは、当初計画に対して、日和見主義的に、重点ポイントの変更や処理方法の拡張・修正が行われ、これらが偶然性を生み出しています。

モニタリング

実世界の創造性は複雑で、フィードバックが曖昧で、解釈がバイアスに左右されてしまいます。そのため、モニタリングが非常に重要になります(Hogarth, 1980)。モニタリングには、状況を系統的に測る測度と問題解決に関する成功の条件が必要になるため、これらを探すこともこのコア・プロセスに含まれます。

モニタリングのもう一つの重要な役割は、問題解決に重要な要素を示し、カテゴリー構造に必要な修正を示唆することです。これにより、学習が行われ、問題構築に修正が加えられた結果、新しい問題解決のための下地ができていきます。(Hayes and Flower, 1986; Brown and Campione, 1986; Kepner and Tregoe, 1965; Parnes, 1967; Morgan, 1985)

まとめ

ということで、Mumfordの情報処理モデル(プロセス分析モデル)をまとめてみました。直線的に進むことが前提のステージモデルに対して、後続のプロセスからのフィードバックによってプロセス間に循環があることが、試行錯誤している状況を捉えていて、より現実に近い気がしました。

しかし、これはどう見てもプロセスモデルの1つなんですが、どうしてコンポーネントモデルとして紹介されていたのでしょうね?見るべき論文を間違ったのでしょうか・・・。

参考文献

Mumford, M. D., Mobley, M. I., Reiter‐Palmon, R., Uhlman, C. E., & Doares, L. M. (1991). Process analytic models of creative capacities. Creativity Research Journal4(2), 91-122.

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