因果性の哲学⑨|因果性とマネジメント

こんにちは。やまもとです。

因果性を勉強して、DIKWピラミッドの「教えられる」知識段階から「論じられる」理解段階へ移るには、

  • 因果メカニズムの構築
  • 反事実的対比による検証

が、必要ではないか?と結論づけました。(参考:因果性による知識と理解の違い

これは、マネジメントでも重要な点なのでは?と思ったので、メモを残しておきたいと思います。

thoughtful ethnic businessman using laptop while working in office
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自律性を育む

パンデミックの影響でテレワークでの仕事が増えたことで、上司が部下を逐一監視下に置くようなマネジメントは非現実的になりました。そのため、管理を強化するのではなく、部下が自律的に働けるようなマネジメントが求められています。逆に、部下には、指示を待って行動するのではなく、自ら考えて行動する自律性が求められています。

しかし、この「自ら考えて行動する」が曲者です。多くの知識を持ち、それを瞬時に引き出せたとしても、それは「博識」なだけでは、行動に移すような「考え」ではありません。ここでの「考えて」とは、「行動Aを行えばBという結果になり、Bという結果があればCが言えるだろう。だから、今、行動Aを行うべきだ」のように論じられることです。つまり、部下が自律性を発揮するには、物事の因果を論じられること、すなわち理解段階に至っていなければなりません。

一方、「教えられる」知識段階から「論じられる」理解段階に移るには、知識を因果性で結びつけた因果メカニズムと、因果メカニズムに介入を行なった場合と行わなかった場合を比較する反事実的検証が必要でした。

したがって、部下に自律性を持ってもらうためには、因果メカニズム構築能力反事実的検証能力が必要なのではないでしょうか?

ただし、因果メカニズム構築は知識を因果性で結びつけることであるため、知識段階で多くの物事の知識を獲得していなければなりません。もしそもそも知識Aと知識Bがなければ、因果性A→Bで結びつける物事そのものが存在しないためです。そのため、階層別の研修ではなく、部長が受けるような研修(リーダーシップ研修など)を新入社員にも受けさせたほうが良いでしょう。

crop ethnic man in park
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モチベーションを維持する

モチベーションが上がるポイント、いわゆる「やる気スイッチ」は個人に依存していますが、モチベーションを下げるポイントは比較的共通点が多いのではないでしょうか。

特に時間がない場合、部下に説明を求められた管理職の上司は、次のような説明してしまいがちです。

  • 環境状況のせいにして、その場をしのぐ
  • 経営層他部門のせいにして、その場をしのぐ

前者の例で言えば、「コロナで緊急事態だから」「目標にあと少し足りないから」「納期が迫っているから」といった理由で説得しようとする説明です。後者の例としては、「上で決まったことだから」「人事に言われたから」「計数をカウントされているから」などの理由を用いた説明です。

しかし、これらの説明は、部下のモチベーションの観点からすると最悪です。これらの説明が行間で語っていることは、「君には制御不能な理由だから諦めてくれ。しかも、自分にも制御不能な理由だから、私の責任ではない。」ということです。このような説得は、部下のモチベーションが高い場合には「そのモチベーションを下げてくれ」、部下のモチベーションが低い場合には「モチベーションは低いままでいいから、とにかくやってくれ」という説得になっています。つまり、「モチベーションを下げて、低いままにしておいて」という説得をしていることになります。

部下の方からしてみると、一応、筋は通っているように聞こえ、「自分ではどうしようもない」と言わ続けることになるので、「仕方ない」「諦める」といった気持ちになることでしょう。すると、モチベーションは下がり、閉塞感を強めることになります。その結果、「どうせ言っても無駄」「どうせ、できないだろう」「どうせ、評価には関係ない」といった「諦め文化」が出来上がってしまいます。

本来であれば、その場凌ぎの理由を探すのではなく、環境や状況、経営層や他部門の狙いも統合して、因果メカニズムとして説明し、「もし、介入Cをしたら?」などと部下にも考える余地を残すことが重要でしょう。余地があるため、部下自身も反事実的検証をし、納得して、意思決定ができます。すると、完全にではないものの、「仕方ない」「諦めるといった意思決定が減り、モチベーションは下がりにくくなります。

したがって、経営層や管理職層にも、因果メカニズム構築能力反事実的検証能力が備わっていなければならないのかもしれません。

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参考

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