チクセントミハイの創造性

「フロー」の研究で有名なチクセントミハイ教授も、創造性について言及しているので、今回はその内容をざっくり見てみたいと思います。

創造性の3要素

チクセントミハイは「ドメインを変革するプロセス」を創造性と定義し、創造性が発揮されるには、次の3要素が必要だとしています。(Csikszentmihalyi,1997

  1. Domain:記号的ルールや手続きが定められた領域
  2. Field:アイデアを認識し評価するゲートキーパーとしての専門家
  3. Indivisuals:ドメインの知識を使いながら、新しいアイデアやパターンをもたらす個人

これは、創造性のある個人が、興味や好奇心のある領域にアクセスできなかったり、そのアイデアを正しく評価できる専門家がいなければ、結局、創造性は発揮されないまま終わってしまう、ということを表しています。

チクセントミハイの創造性プロセス

チクセントミハイは、創造性プロセスを5フェーズで説明しています。(Csikszentmihalyi,1997

  1. Preparation:意識的・無意識的に関わらず、興味や好奇心をかき立てる問題に没頭する期間
  2. Incubation:アイデアが意識に上らなくなり、普通ではないアイデアの結合が起こる期間
  3. Insight:パズルのピースとして、洞察が落ちてくる瞬間
  4. Evaluation:落ちてきた洞察に価値があるか、新しいのかを評価する期間
  5. Elaboration:洞察を理性的に検証する期間。合格すると日常的な精緻化に進む

この創造性プロセスは、前回の「Wallasの創造性プロセス」とおおよそ同じプロセスですね。PreparationとIncubationは共通していますし、InsightはWallasのIlluminationに相当し、EvaluationとElaborationはWallasのEvaluationを2つに分けたと考えることができます。

また、通常、洞察は、Preparationを経て準備された心を持つ人、言い換えると、特定の問題に対して長期間懸命に考え続けてきた人にもたらされる、としています。

創造性の4条件

チクセントミハイは、上記の創造性プロセスが、うまく進行するには4つの条件が必要だとしています。(Csikszentmihalyi,1997

  1. 取り組む作業に注意を払うこと
  2. 作業が意図した方向に進んでいるか、自分のゴールや感覚に注意を払うこと
  3. ドメイン知識にいつでもアクセスできること
  4. 正しい方向かやセールストークに有効かを、専門家の同僚に聞くこと

つまり、作業に集中できる環境と、ドメイン知識をいつでも得られる環境ゲートキーパーが何を評価するのかを知れる環境が必要ということだと思います。

フローと創造性

最後に、チクセントミハイの有名な研究成果であるフロー体験と創造性の関係を見ておきたいと思います。

フロー体験とは、次のような構成要素を持ちます。(Csikszentmihalyi,1997

  • 作業中、どの段階でもゴールが見えている
  • 何かを試すと、すぐにフィードバック(結果)が得られる
  • 挑戦とスキルのバランスがとられている
  • 行動と意識が混ざり合う
  • 気晴らしを意識しなくなる
  • 失敗を心配しなくなる
  • 自己意識がなくなる
  • 時間を忘れ
  • 行動自体が目的になる

このようなフロー状態を実現できるかは、焦点化集中が鍵になります。一方、創造的な人の特徴は、長期的好奇心で集中を持続することができ、創造性プロセスの中で自己意識がなくなるほど焦点化できる人の特徴(Csikszentmihalyi,1997)、すなわちフロー状態に入りやすい人の特徴になっています。

まとめ

「フロー」で有名なチクセントミハイが提唱する創造性のプロセスについてまとめてみました。

創造性プロセス自体は、Wallasとほとんど同じでしたが、創造性に必要な条件や必要な要素、また「フロー」との関係が分かった点が良かったなと思います。

この記事は、気になったことの調べものの備忘録ですが、誰かの役に立てばいいなぁと思っています。

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