購買意思決定プロセスが変わる理由

こんにちは、やまもとです。

マーケティング検定2級の勉強をしていますが、今回は消費者の購買意思決定プロセスの変容についてメモしておきます。

前回も、購買後評価で顧客満足が高ければ、ヒューリスティックの単純化が行われ、情報探索や代替案評価がほとんど行われなくなっていく点を書きました。

今回は、その状態の類型と変化についてです。

そういえば、前回の購買意思決定プロセスの覚え方は、Problem(問題認識)、Information(情報探索)、Comparison(代替案評価)、Buying(選択・購買)、Evaluation(購買後評価)、Recommendation(推奨)で、PICBE(R)(ピックビー、ピックバー)にすることにしました。

問題解決の3類型

テキストによると、一般的に消費者の問題解決パターンは、①入念に調査する(拡大的問題解決)、②簡易的に検討する(限定的問題解決)、③ほとんど検討しない(日常反応行動)の3パターンに類型化でき、①→②→③の順に、購買意思決定プロセスが単純化されます。

これらは、「問題解決の複雑さ」や「必要な情報量」に依存し、「意思決定時間」に違いが見られます。

製品カテゴリーの知識が増えるにつれ、必要な情報量が減少していくことで、拡大的問題解決から日常反応行動へと変容していきます。

ただし、製品カテゴリーの種類によっては、拡大的問題解決からほとんど変容しないもの、逆に最初から日常反応行動になるものもあります。

これらの特徴をまとめておくと、次のようになります。

  1. 拡大的問題解決(包括的問題解決)
    • 消費者が製品カテゴリーの知識をほとんど持たず、選択基準づくりから始める場合
    • 高価格で購入頻度の低い商品の購買意思決定でよく見られる
    • 購買意思決定プロセスの全段階PICBEに時間をかけて取り組む(特にICEに時間を掛ける)
    • すなわち、マーケティング・コミュニケーションによる事前情報の提供が重要
  2. 限定的問題解決
    • 消費者が製品カテゴリーについて、ある程度知識があり、選択基準も形成されている場合(追加情報は必要になる)
    • 購買意思決定プロセスのICの段階は、必要最低限に簡略化され、意思決定時間が短くなる
    • Eの段階の評価結果がポジティブなものであれば、ヒューリスティックの単純化がすすむ
    • そのため、製品のアップデートやマーケティングによる追加情報が重要
  3. 日常反応行動(常軌的反応行動)
    • 消費者がすでに製品カテゴリーとブランドについて、十分な知識があり、選択基準が確立している場合
    • すでに特定ブランドへのロイヤルティがあり、新しい情報はほとんど必要ない
    • 購買意思決定プロセスではICの段階が省略され、ニーズ喚起→購買という単純化が起こる
    • 低価格で購買頻度の高い製品カテゴリーの購買で多く見られる
    • つまり、店頭でのマーケティング施策や棚の確保が重要

例えば、自動車を購入する場合は、事前に情報収集して、時間をかけて検討するのに対し(拡大的問題解決)、トイレットペーパーのような消耗品は、あまり検討せずに店頭で見つけた商品を購入する(日常反応行動)といえば、イメージしやすいのではないでしょうか。

ただし、どんな商品でも購買意思決定プロセスが簡略化されるわけではなく、例えば購入頻度が少ない自動車の場合は、日常反応行動になることはほとんどないでしょう。

もちろん、毎日数百万円を使えるほど経済的に裕福で、一日毎に自動車を買い換える人であれば、自動車購入も日常的反応行動になるのかもしれませんが・・・。

アサエルの購買行動類型

別の分類方法として、マーケティング研究者のアサエルは、製品に対する関与の程度(関与水準)とブランド間の知覚差異を軸に、4類型に分類しました。

もし、製品・サービスの購買行動類型が分かれば、適切なマーケティング施策で、マーケティングを効率化することができます。

関与の程度(関与水準)とは、消費者と製品の関わり度合いのことで、関心やこだわりが強いほど高くなります。

ブランド間の知覚差異とは、製品カテゴリーのブランド間の違いを消費者が知覚できる程度のことで、明確な違いを知覚できるほど大きくなります。逆に言うと、製品提供者がいくら違いを強調しても、消費者が知覚できなければ、知覚差異は大きくなりません

ここでは、アサエルの4類型について、その特徴をまとめてみます。

  1. 複雑な情報処理型(情報処理型)
    • 関与の程度が高く、ブランド間の知覚差異が大きい場合の類型
    • 高価な製品購買頻度の低い製品自己表現の手段となる製品の購買に相当する
    • ブランドが認知され(イメージが形成され)、ブランドの評価(態度や選好)が決まった後、購買行動に移る
    • 購買行動が認知的学習に依存するため、企業はネット情報などで、ブランドの特徴や利点を訴求する必要がある
  2. 認知的不協和低減型(不協和解消型)
    • 関与の程度が高いが、ブランド間の差異はほとんど知覚していない場合の類型
    • 例えば、高価格で色合いなどの好みの違いが出る絨毯の購買が相当する
    • 差異を感じないため、まずは購入し、商品からブランドが認知され(イメージが形成され)、ブランドの評価(態度や選好)が決まる
    • 評価の段階で、「本当にこれでよかったのか?」という不安になる(これを認知的不協和と呼んでいる)
    • 企業は、このような不安を解消、または発生しないようにコミュニケーションをしなければならない
  3. バラエティ・シーキング型
    • 関与の程度が低いが、ブランド間の差異は知覚している場合の類型
    • 例えば、スナック菓子即席麺清涼飲料サラダドレッシング
    • 強固な選好は形成されず店頭で目についたブランドを購入する購買が相当する
    • 前回購入に特に不満がなくとも、「目新しさ」や「次はこれにしてみよう」などのブランド・スイッチが起こり得る
    • 関与が低いため、事前調査をほぼ行われず、漠然とした認知(イメージ)で店頭に向かい、購入した後、使用によって全体的な評価が行われる
    • 企業は、ブランド・スイッチを防ぐため、消費者の関与を引き上げることが必要になる
  4. 慣性型
    • 関与の程度が低く、ブランド間の差異も知覚していない場合の類型
    • いつも買っている」「価格が安いから」「最初に目について」「なんとなく知っている」という理由の購買が相当する
    • 例えば、トイレットペーパーやティッシュペーパー、電球・電池、食塩などの日用品
    • ブランドの評価がほとんど行われないため、店頭で目立ち手に取りやすい売り場の確保が最も重要になる
    • 仮に、繰り返し購入する消費者がいたとしても、この類型の場合は「見かけ上のロイヤルティ」で単なる惰性にすぎない

認知的不協和は、心理学的には「あれ?」という「違和感」に近いと思いますが、ここでは「不安」の意味で使われているため、注意する必要がありそうです。

購買行動の移り変わり

こちらの記事に書いてありますが、関与には大きく分けて「課題解決型関与(状況特定的関与)」と「思い入れ型関与(対象特定的関与)」の2種類があります。

製品によって、日用品のようにそもそも関与度が低い製品や、絨毯のようにそもそも差異知覚が低い製品がありますが、消費者にとって購入経験がない製品カテゴリーは事前知識がないため「複雑な情報処理型」の購買行動を取ると想定されます。

その場合、購買動機が「課題解決型関与」と「思い入れ型関与」の場合では、購買行動プロセスの移り変わり方が異なるのではないでしょうか?

課題解決型関与の場合

図3:課題解決型関与の場合の購買行動の移り変わり

課題解決型関与は一時的な関与で、製品の購入によって課題が解決されると関与度は低下します。

この時、購入した製品によって課題が解決した記憶が残るため、次に同じ課題が発生すると評価を介さずに同じ製品を購入する可能性が高いです。つまり、バラエティー・シーキング型の購買行動に変容します。

同じ製品で同じように課題解決できると、「やっぱりこの製品で良かった」などの評価が成されますが、何度も繰り返すうちに評価も行われなくなります。こうして、「慣性型」の購買行動に変容していきます。

このようにして、徐々に惰性で購入するように変化していくと考えられます。

この購買行動の変化は、上記「問題解決の3類型」における「購買意思決定プロセスの変容」と同じ変化と捉えられます。

思い入れ型関与の場合

図4:思い入れ型関与の場合の購買行動の移り変わり

思い入れ型関与は永続的な関与で、関与度が下がることは稀です。

製品やブランドに対する思い入れが強い場合、消費者は継続的探索を日常的に行い「認知→評価」のプロセスを繰り返しています。購買行動に移る頻度は少ないですが、「複雑な情報処理型」の購買行動に分類できるでしょう。

思い入れが強い消費者が他の購買行動に移る可能性としては、思い入れの対象とよく似た製品やブランドを認知した時が考えられます。比較評価しても違いがいまいち掴めない場合、試しによく似た製品やブランドを購入して比較してみるといった購買行動をとる可能性があります。違いが掴めないとは、ブランド間の知覚差異が下がったことを意味します。つまり、一時的に「認知的不協和低減型」の購買行動に移る可能性を示しています。

認知的不協和が解消されれば、「やっぱり元のブランドの方がいい」と評価し関与の対象を変更せずに「複雑な情報処理型」購買行動に戻って行くか、「新しいブランドの方が良かった」と評価して関与の対象を変更して「複雑な情報処理型」購買行動に戻ることでしょう。

最後に

購買行動の類型は、名前が一般的に知られていないので、試験問題でも「なんだこれ?」となりました。特に、バラエティ・シーキングは、なんとなく意味は推測できましたが、勘で回答するしかありませんでした。具体的な類型の内容を知っていても、類型の名称を知らないと出題文の意味がわかりませんので、覚えておく必要がありますね。

何か覚えやすい方法はないですかねぇ・・・

製品やブランドの特性に依存しますが、購買意思決定プロセスは消費者の経験によって移り変わることは、忘れてはいけない観点ですね。

分析の時に上記の移り変わりを知っていると、消費者を類型に当てはめるだけでなく、その後どう変遷していくかを予測できるようになります。

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