購買意思決定プロセスとは(PICBERモデル)

こんにちは。やまもとです。

今回も、マーケティング検定2級の勉強で、購買意思決定プロセスについてメモしておこうと思います。

みなさんも、製品・サービスを購入する際は、いろいろ検討して(あるいは検討せずに)実際に買うかどうかを決めますよね?また、実際購入して「失敗したなぁ」と感じて、「次は失敗しないようにしよう」と失敗した点を考えたり、「いや、この点では買ってよかった」と自分を説得したりしますよね?

このような購買行動をプロセスとして理解しようというのが、購買意識決定プロセスの目的になります。

購買意思決定を理解できると、消費者の購買行動のどこを変化させれば、自社製品・サービスの購買につながるのかを考察できるようになるため、マーケティングでは非常に重要なポイントになります。

購買意思決定プロセスというと、AIDMAやAISASのことかと思っていたのですが、これらは広告反応モデルと言うそうで、別のものでした。

購買意思決定プロセスは、以下のようなCDPモデル(Consumer Decision Process)という形でモデル化されています。

図1:購買意思決定モデル、CDPモデル

具体的には、「あ、これが必要だった」と気づいて(問題認識)、「どこで売っているかなぁ」とAmazonで検索して(情報探索)、いくつかの商品を比較して(代替案評価)、一番安い商品をポチる(選択・購買)。商品が到着後に実際に使用して見たら、「うわっ、失敗した!」と後悔して(購入後評価)、「次は、安すぎない商品を選ぼう」と思う。というような購買行動の一連の流れをモデル化したものが上図です。

以降は、このプロセスの1つ1つについて、書いていきます。

1. 問題認識

よく言われていることですが、問題とは「理想と現実のギャップ」のことです。

このギャップが、消費者個人の許容レベルと超えたとき、問題として認識されます。言い換えると、ニーズが顕在化します

逆にいうと、許容レベル内であれば問題として認識されず、ニーズは潜在化します。

そのため、マーケティング・コミュニケーションで重要なニーズ喚起とは、理想と現実のギャップを広げる行為にほかなりません。

現実と理想のギャップを広げるには、①理想を引き上げる、②現実を引き下げる、③両方同時に起こすことが考えられます。

現実が下がるのは、例えば、「そろそろお醤油がなくなりそう」といった事実を認識した場合や、世の中の不安を煽るような情報を見た場合が相当すると思います。

前者の場合は残量が見えるパッケージにするなどの対策が考えられますし、後者の場合は「〜習慣を続けると、平均寿命がX%縮む」といった情報発信が考えられます。後者のような広告はよく見ませんか?

2. 情報探索

問題を認識すると、問題を解決する製品やサービスを探します。

このとき、すでに購入したことがあり、同じ商品で十分だと考えていた場合、記憶の中の探索(内部探索)だけですますことがあります。

反対に、どんな商品で問題を解決できるか分からない場合、Amazonや楽天といったWebサイトで検索(外部探索)したりして、情報を得ようとします。

この情報探索の流れを図示すると、以下のようになります。

図3:情報探索フロー

試験対策として、おさえるポイントは「内部探索が先、外部探索が後」です。内部探索で情報が不足していたら、外部探索を行います。

少し混乱しそうな点は、外部探索には「購買前探索」と「継続的探索」の2種類がある点です。

購買前探索は、内部探索で情報不足だった場合に行われるため、内部探索→外部探索の順序の通りになります。

しかし、継続的探索は、購買意思決定とは無関係に行われる外部探索なので、順序として外部探索→内部探索になっているように考えてしまうかもしれません。

そのため、上図では、継続的探索をあくまで内部情報を蓄積・精緻化する行動と考えて、情報探索プロセスからは除外しています。

継続的探索の例としては、釣り好きな人が特に購入予定もないのに、釣り具関係のサイトを見たり、雑誌を購入したりして、情報収集することがあげられます。

図の中の「情報探索能力」は、記憶された内部情報を取り出す能力(すなわち記憶力)が内部探索に影響を与えることを示しています。簡単にいうと、記憶力には個人差があるよね?ってことです。

3. 代替案評価

特に、高額な商品(例えば、自動車)を購入する場合、失敗して再購入することが難しいため、事前に似たような商品をよく比較してから購入することが多いのではないでしょうか?

このような、商品比較の段階を代替案評価(選択肢評価)といっています。

評価方法(あるいは決定方略)は、いくつか類型化されていて、図示すると次のような形になります。

図4:代替案評価ルールの類型

実際には、上図の評価ルールを複数使用していて、1つの評価ルールで判断する訳ではありません。

ですが、ここでは、類型ごとに説明を書いておきます。

3-1. 補償型ルール

補償型ルールとは、簡単に言うと、総合評価で判断する評価ルールです。

例えば、自動車の場合、「好きなエンジン音はないけど、燃費がいいからハイブリット車を購入する」といったように、ある属性(エンジン音)の評価が低くても、別の属性(燃費)で補償・補完して評価するルールのことです。

そのため、補償型ルールと呼びます。

この補償型ルールの代表的モデルが、製品の個々の属性に基づき、消費者のブランドに対する態度(選好度)を算出する多属性態度モデルで、いくつか異なるタイプの中でも線型補償型が妥当性が高いと言われています。

線型補償型の多属性態度モデルとは、選好p(x)を目的関数、属性x_iの線型結合として、下記のように表します。

p(x) = \displaystyle{\sum_{i=1}^N} a_i x_i

ここで、重みa_iは、属性x_iの重要度を示し、消費者個人によって異なります。

補償型ルールでは、総合評価である選好p(x)が最大のものを選択します。

3-2. 非補償型ルール

非補償型ルールとは、一言で言えば、ヒューリスティック(思考の簡略化)による評価ルールです。

補償型ルールだと、全ての属性について逐一評価を行うため、情報処理の負荷が大きく、実際にはやってられません。

実際、みなさんも、スーパーやコンビニで、そこまで深く比較検討せずに、購入を決めることがありますよね?

例えば、ビールを選ぶとき、「見慣れたブランドかどうか」だけで選んだりすると思います。

このとき、他の属性(サイズ、価格、味)は無視され、属性間に補償関係がないため、非補償型ルールと呼ばれています。

この評価ルールは、もう少し細かく類型化されています。

  • 連結型ルール
    • 一つでも必要条件を満たさない属性があると、そのブランドの購入を諦める足切り型ルール
    • ブランドごとに評価ルールを繰り返し、必要条件を満たしたブランドから選択する
  • 分離型ルール
    • 一つでも十分条件を満たす属性があると、その他の属性を無視して、そのブランドを選択する一点突破型ルール
    • こちらも、ブランドごとに評価ルールを繰り返す
  • 辞書編纂型ルール
    • 複数の属性に関する十分条件を、重要な順に比較していき、決定できるまで逐次比較していくルール
    • ブランドではなく、属性単位で評価ルールを繰り返す
  • 逐次削除型ルール
    • 複数の属性に必要条件を設定し、条件を満たさない製品を逐次削除していくルール
    • これも、属性単位で評価ルールを繰り返す
  • 感情参照型ルール
    • 記憶の中の評価イメージから、好き・嫌いで選ぶルール
    • 属性の評価は行われない

いかがでしょう?みなさんも、これらの評価ルールを使っていたりしませんか?

当然、どれか一つではなく、状況や商品に応じて使い分けているのではないでしょうか。

4. 選択・購買

事前にせっかく比較検討したのに、お店にいったら別の製品を買ってしまった経験はありませんか?

このように、実際の選択・購買において、予定したものと別の製品を買ってしまうことを非計画購買と言います。

いわゆる衝動買いですね。

反対に、予定していた製品を予定通りに購入することは、計画購買と呼ばれます。

非計画購買を類型化すると、いくつかの種類に分けられます。

非計画購買購買行動の内容
ブランド選択製品カテゴリーを決めて来店し、店内でブランドを選ぶ
ブランド変更特定のブランドを決めて来店したが、実施には別のブランドを購入する
想起購買店舗内で必要性を思い出して、商品を購入する
条件購買割引などの条件により購入を決めて、商品を購入する
衝動購買商品の新規性や衝動により、商品を購入する
関連購買他の購入商品に関連して必要性を感じ、商品を購入する
表1:非計画購買の種類

いろいろ思い当たる節がありますね。

実際、どのくらい非計画購買がされているかというと、次のようなデータがあるそうです。

図5:消費者の購買行動

なんと89%は非計画購買だそうで、店頭でのマーケティング施策がいかに重要かが分かります。

上記のデータは、公益財団法人流通経済研究所の1983年の調査結果だそうですが、2013年の調査でも非計画購買(狭義)の割合は77.4%で、ほとんど変化がないそうです。

この選択・購買の段階は、BtoCとBtoBで大きく差が出そうですね。BtoBの場合は、大部分が計画購買になると予想しています。

5. 購買後評価

みなさんも、「買って失敗だった」とか「買ってみたら意外と当たりだった」といった経験はあるのではないでしょうか?

こういった購入後の認知のことを購買後評価と言っています。

これは、購入前の期待水準と購入後の知覚水準の差を評価していると考えられます。

図6:購買後評価の差異

製品やサービスが期待以上だった場合、消費者は満足し、次回以降の購入では「この商品は当たりだった」という記憶により、代替商品の情報探索を省略するため、ヒューリスティックの単純化が行われます。

逆に、商品が期待以下だった場合、消費者は不満足を覚え、「次回は失敗しないように」という記憶が残り、失敗しない条件を加えることで、ヒューリスティックの精緻化が行われます。これにより、情報探索や代替案評価がより煩雑化していきます。

ポイントは、必ずしも製品・サービスの品質や性能に比例して顧客満足が高まるわけではなく、高い顧客満足は製品・サービスが期待以上だったかどうかに依存するという点です。

言い換えると、高い顧客満足には「驚きを与えること」が必要だと言えます。

当たり前ですが、期待通りの製品・サービスは不満もないですが、感動もしませんよね。

そのため、マーケティング施策では、消費者の期待レベルを絶妙にコントロールすることが求められます。

期待レベルは、低すぎるとそもそも購入して貰えませんし、高すぎると不満に繋がってしまうため、難しいですね。

6. 推奨行動(参考)

現代だと、SNSなどの個人の情報発信ツールが充実したため、コトラーらは購買後評価のあとに「推奨」段階を追加した方がいいと提唱しています。

人は、「これはいい!」と思ったものを推奨しますから、消費者に推奨行動をしてもらうためにも「驚きを与えること」がさらに重要になってきます。

逆に、「これはクソだ!」と思われると、反推奨行動も簡単にできてしまうため、期待レベルの絶妙なコントロールがさらに重要になります。

このような、推奨行動・反推奨行動は、別の消費者の情報探索によって内部情報に蓄積され、その消費者の購買意思決定プロセスに影響を及ぼすことになります。

最後に

購買意思決定プロセスの各段階について勉強しましたが、自分自身に照らし合わせても違和感はなかったように思います。

でも、専門用語的な名称が多くて、覚えておくのは大変そうです。

例えば、CDPモデルは、Problem(問題認識)、Information(情報探索)、Alternatives(代替案評価)、Buy(選択・購買)、Evaluation(購買後評価)とRecommend(推奨)で、PIABE(R)と覚えておけばいいでしょうか。

ピアべ、もしくはピアバー。

ん〜、いまいち。

※Problem(問題認識)、Information(情報探索)、Comparison(代替案評価)、Buying(選択・購買)、Evaluation(購買後評価)、Recommendation(推奨)で、PICBE(R)(ピックビー、ピックバー)にすることにしました。

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